AHL 1.12a — Complex numbers in Cartesian form(複素数と直交形式)

ノートWhat you should be able to do
  • \(i^{2} = -1\) という約束から出発して、complex number(複素数)を \(z = a + bi\) の形で書ける。
  • real part(実部)と imaginary part(虚部)を、正しく取り出せる。
  • conjugate(共役複素数)\(z^{*}\) を書ける。
  • 和・差・積を手で計算し、商は conjugate をかけて \(a + bi\) の形に直せる。
  • 実数係数の \(2\) 次方程式で \(b^{2}-4ac < 0\) のとき、解を \(a \pm bi\) の形で求められる。
  • 累乗や検算を、GDC でできる。

The idea

1. The imaginary unit(虚数単位 \(i\))

実数の中では、\(2\) 乗して負になる数はありません。ですから

\[ x^{2} + 1 = 0 \]

は、実数の解を持ちません。\(y = x^{2}+1\) のグラフが \(x\) 軸と交わらない、と言っても同じことです。

ここで数学がしたのは、「解なし」で止めることではなく、\(2\) 乗すると \(-1\) になる数を \(1\) つだけ新しく用意することでした。それが imaginary unit(虚数単位)\(i\) です。

\[ i^{2} = -1 \tag{1}\]

この約束 \(i^{2} = -1\) は、公式集には載っていません。覚えておいてください。

「\(i = \sqrt{-1}\)」と書かない理由

\(i = \sqrt{-1}\) と書いてある本もありますが、この書き方は落とし穴を作ります。\(\sqrt{\ }\) の計算法則をそのまま持ちこむと

\[ \sqrt{-1} \times \sqrt{-1} = \sqrt{(-1)(-1)} = \sqrt{1} = 1 \]

となってしまい、\(i^{2} = -1\) と食い違います。正しいのは \(i^{2} = -1\) のほうです。

間違っているのは \(\sqrt{\ }\) の使い方のほうです。\(\sqrt{a} \times \sqrt{b} = \sqrt{ab}\) という法則が使えるのは、\(a \geq 0\) かつ \(b \geq 0\) のときだけで、中身が負のときには成り立ちません。

ですから、負の数を \(\sqrt{\ }\) の中に残したまま計算しないでください。 先に \(i\) を外に出して、\(\sqrt{\ }\) の中には正の数だけを残します。そうすれば、あとは今までどおりの法則が使えます。

\[ \sqrt{-36} = \sqrt{36}\,i = 6i, \qquad \sqrt{-20} = \sqrt{20}\,i = 2\sqrt{5}\,i \]

2. Cartesian form(直交形式 \(a + bi\))

\(i\) を \(1\) つ足すだけで、実数と組み合わせた数がすべて書けるようになります。

\[ z = a + bi \tag{2}\]

ここで \(a\) と \(b\) は実数です。この式は、公式集の 1.12 の欄にあります。

この形を Cartesian form(直交形式)といいます。\(a\) を real part(実部)、\(b\) を imaginary part(虚部)といい、\(\operatorname{Re}(z) = a\)、\(\operatorname{Im}(z) = b\) と書きます。

重要imaginary part は \(b\) です。\(bi\) ではありません

\(z = 3 + 2i\) のとき

  • real part は \(3\)
  • imaginary part は \(\mathbf{2}\)

です。\(2i\) ではありません。real part も imaginary part も、どちらも実数です。\(i\) は、\(2\) つの実数を組にして並べておくための目印だと思ってください。

\(b = 0\) のとき \(z\) は実数、\(a = 0\)(かつ \(b \neq 0\))のとき purely imaginary(純虚数)といいます。

\(2\) つの複素数が等しいのは、real part どうしと imaginary part どうしが、両方とも等しいときだけです。答えを \(a + bi\) の形にそろえてから見くらべる、という習慣はここから来ています。

3. Addition and subtraction(和と差)

\(2\) つの複素数の和と差は、real part どうし、imaginary part どうしで計算します。\(i\) を、文字式の \(x\) のように扱ってください。同じ部分どうしを足します。

\[ (3 + 2i) + (1 - 5i) = (3+1) + (2-5)i = 4 - 3i \]

\[ (3 + 2i) - (1 - 5i) = (3-1) + (2+5)i = 2 + 7i \]

4. Multiplication(積)

複素数の積は、かっこを普通に展開して、最後に \(i^{2}\) を \(-1\) に置きかえます。

\[ \begin{aligned} (3+2i)(1-5i) &= 3 - 15i + 2i - 10i^{2} \\ &= 3 - 13i - 10(-1) \\ &= 13 - 13i \end{aligned} \]

\(-10i^{2}\) が \(+10\) に変わるところが、この計算のポイントです。\(-10\) に \(i^{2}\) の \(-1\) がかかります。負の数どうしをかけると正になるので、符号が \(-\) から \(+\) に変わります。

\(i\) の累乗は \(4\) つで一周します

\[ i^{1} = i, \qquad i^{2} = -1, \qquad i^{3} = i^{2}\cdot i = -i, \qquad i^{4} = (i^{2})^{2} = 1 \]

\(i^{4} = 1\) に戻るので、ここから先は同じ \(4\) つの繰り返しです。ですから \(i\) の大きな累乗は、指数を \(4\) で割った余りだけ見れば決まります。

\[ i^{23} = i^{20} \cdot i^{3} = (i^{4})^{5} \cdot i^{3} = 1 \cdot (-i) = -i \]

複素数そのものの累乗(\((3+2i)^{7}\) のようなもの)は、GDC で計算してかまいません。

\(z^{2}\) のかたまりを作って、それを何度も \(2\) 乗する——という手の方法は 例 1 にあります。

例題 1 Let \(z = 1 + i\).

(a) Show that \(z^{2} = 2i\).

(b) Hence find \(z^{8}\).

(c) Verify your answer to part (b) using your GDC.

(a) 展開します。

\[ (1+i)^{2} = 1 + 2i + i^{2} = 1 + 2i - 1 = 2i \]

(b) \(z^{8}\) を \(8\) 回かけるのではなく、\(z^{2}\) のかたまりを使います。

\[ z^{8} = \left(z^{2}\right)^{4} = (2i)^{4} = 2^{4} \cdot i^{4} = 16 \cdot 1 = 16 \]

\(i^{4} = 1\) は 第4節 の輪から出てきます。\(z^{8}\) は実数になりました。

(c) GDC に \((1+i)^{8}\) と入れます(GDC 第4節)。\(16\) と返れば一致です。

Verify は「自分の答えが正しいことを確かめて示す」という意味の command term です。答えを \(2\) 通りで出しただけでは不十分で、一致したことを一言書いてください。

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[z^{2} = (1+i)^{2} = 1 + 2i + i^{2} = 1 + 2i - 1 = 2i\]

(b) \[z^{8} = (z^{2})^{4} = (2i)^{4} = 16\,i^{4} = 16\]

(c) The GDC gives \((1+i)^{8} = 16\), which agrees with the answer in part (b).

5. The complex conjugate(共役複素数)

\(z = a + bi\) に対して、conjugate(共役複素数)を

\[ z^{*} = a - bi \tag{3}\]

と書きます。\(\bar{z}\) という書き方もありますが、IB の問題文では \(z^{*}\) がよく使われます。conjugate の使い方も公式集には載っていないので、自分で使えるようにしておいてください。

conjugate が大事なのは、\(z\) と \(z^{*}\) を足しても、かけても、答えが実数になるからです。

\[ z + z^{*} = (a+bi) + (a-bi) = 2a \]

\[ z\,z^{*} = (a+bi)(a-bi) = a^{2} - (bi)^{2} = a^{2} - b^{2}i^{2} = a^{2} + b^{2} \tag{4}\]

\(a^{2}+b^{2}\) は、\(a\) と \(b\) が同時に \(0\) でないかぎり必ず正の実数です。この \(a^{2}+b^{2}\) は、AHL 1.12b で扱う modulus(絶対値)の \(2\) 乗にあたります。

例題 2 Let \(z = 4 - i\).

(a) Write down \(z^{*}\).

(b) Find \(z + z^{*}\) and \(z z^{*}\).

(c) Show that \(z - z^{*}\) is purely imaginary.

(a) imaginary part の符号だけを変えます(第5節)。

\[ z^{*} = 4 + i \]

(b) 足すほうは \(i\) の項が消えます。かけるほうは 式 4 が使えます。

\[ z + z^{*} = (4-i)+(4+i) = 8 \]

\[ z z^{*} = 4^{2} + (-1)^{2} = 16 + 1 = 17 \]

(c) Show that と言われているので、途中の式を書くことが答えになります。

\[ z - z^{*} = (4-i) - (4+i) = -2i \]

real part が \(0\) で、imaginary part が \(0\) ではありません。これが purely imaginary の定義です(第2節)。

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[z^{*} = 4 + i\]

(b) \[z + z^{*} = (4-i)+(4+i) = 8\] \[z z^{*} = (4-i)(4+i) = 16 - i^{2} = 16 + 1 = 17\]

(c) \[z - z^{*} = (4-i)-(4+i) = -2i\] The real part is \(0\) and the imaginary part is \(-2 \neq 0\), so \(z - z^{*}\) is purely imaginary.

6. Division(商)

複素数の商も、\(a + bi\) の形に直して答えます。\(\dfrac{3+2i}{1-5i}\) のままでは、\(a + bi\) の形になっていません。分母に \(i\) が残っているからです。

そこで、分母の conjugate を、分母と分子の両方にかけます。

\[ \frac{3+2i}{1-5i} = \frac{(3+2i)(1+5i)}{(1-5i)(1+5i)} \]

分母は 式 4 より \(1^{2}+5^{2} = 26\) で、実数になります。分子は展開して

\[ (3+2i)(1+5i) = 3 + 15i + 2i + 10i^{2} = -7 + 17i \]

ですから

\[ \frac{3+2i}{1-5i} = \frac{-7+17i}{26} = -\frac{7}{26} + \frac{17}{26}\,i \]

となります。小数なら \(-0.269 + 0.654i\)(\(3\) s.f.)です。

ヒント中学で習った「分母の有理化」と同じ手です

\(\dfrac{1}{2-\sqrt{3}}\) の分母をなくすとき、\(2+\sqrt{3}\) をかけました。あのときの相手が、ここでは conjugate になっただけです。

例題 3 Let \(z_1 = 3 + 2i\) and \(z_2 = 1 - 5i\).

(a) Find \(z_1 + z_2\).

(b) Find \(z_1 z_2\).

(c) Write \(\dfrac{z_1}{z_2}\) in the form \(a + bi\), where \(a\) and \(b\) are rational numbers.

(a) real part どうし、imaginary part どうしを足します(第3節)。

\[ (3+1) + (2-5)i = 4 - 3i \]

(b) 展開してから \(i^{2} = -1\) に置きかえます(第4節)。

\[ (3+2i)(1-5i) = 3 - 15i + 2i - 10i^{2} = 3 - 13i + 10 = 13 - 13i \]

(c) 分母の conjugate は \(1 + 5i\) です。分母と分子の両方にかけます(第6節)。

\[ \frac{(3+2i)(1+5i)}{(1-5i)(1+5i)} = \frac{-7+17i}{1^{2}+5^{2}} = \frac{-7+17i}{26} \]

「\(a\) と \(b\) は有理数」と指定されているので、分数のままで答えます。

検算。 \((-\tfrac{7}{26} + \tfrac{17}{26}i)(1-5i) = \tfrac{1}{26}(-7 + 35i + 17i + 85) = \tfrac{1}{26}(78 + 52i) = 3 + 2i = z_1\) ✓

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[z_1 + z_2 = (3+1) + (2-5)i = 4 - 3i\]

(b) \[z_1 z_2 = 3 - 15i + 2i - 10i^{2} = 3 - 13i + 10 = 13 - 13i\]

(c) \[\frac{z_1}{z_2} = \frac{(3+2i)(1+5i)}{(1-5i)(1+5i)} = \frac{3+15i+2i+10i^{2}}{1+25} = \frac{-7+17i}{26} = -\frac{7}{26} + \frac{17}{26}i\]

7. Quadratic equations with \(b^{2}-4ac < 0\)(判別式が負の \(2\) 次方程式)

実数係数の \(2\) 次方程式 \(ax^{2}+bx+c = 0\)(\(a \neq 0\))は、解の公式で解けます。

\[ x = \frac{-b \pm \sqrt{b^{2}-4ac}}{2a} \tag{5}\]

この式は、公式集の Topic 2 の「Prior learning – HL」の欄にあります(AI SL の公式集にはありません)。根号の中の

\[ \Delta = b^{2} - 4ac \tag{6}\]

を discriminant(判別式)といい、公式集の 1.12 の欄にあります。\(\Delta\) が負のときは、\(\sqrt{\ }\) の中が負になります。\(i\) があれば、そこで止まりません。

\[ x^{2} - 4x + 13 = 0 \]

\(\Delta = (-4)^{2} - 4(1)(13) = 16 - 52 = -36\) です。

\[ x = \frac{4 \pm \sqrt{-36}}{2} = \frac{4 \pm 6i}{2} = 2 \pm 3i \]

検算。 \((2+3i)^{2} - 4(2+3i) + 13 = (4 + 12i - 9) - 8 - 12i + 13 = 0\) ✓

なぜ、いつも conjugate pair(共役な組)になるのか

\(\Delta < 0\) のとき、\(\sqrt{\Delta} = \sqrt{|\Delta|}\,i\) ですから、解の公式は

\[ x = \frac{-b}{2a} \pm \frac{\sqrt{\lvert \Delta \rvert}}{2a}\,i \]

という形になります。\(a\)、\(b\)、\(\Delta\) はすべて実数なので、

  • real part は \(\dfrac{-b}{2a}\) で、\(2\) つの解に共通
  • imaginary part は \(\pm\) の符号だけが違う

これはまさに \(p + qi\) と \(p - qi\)、つまり conjugate pair です。上の例でも \(2+3i\) と \(2-3i\) になりました。

係数が実数であることが重要です。 係数に \(i\) が混じっている方程式では、解が組になるとはかぎりません。

例題 4 Consider the equation \(2x^{2} + 2x + 5 = 0\).

(a) Find the value of the discriminant.

(b) Hence solve the equation, giving your answers in the form \(a + bi\).

(c) State the number of times the graph of \(y = 2x^{2}+2x+5\) crosses the \(x\)-axis, giving a reason for your answer.

(a) \(a = 2\)、\(b = 2\)、\(c = 5\) です。

\[ \Delta = 2^{2} - 4(2)(5) = 4 - 40 = -36 \]

(b) Hence は「(a) の結果を使いなさい」という意味です。\(\Delta = -36\) をそのまま解の公式に入れます。

\[ x = \frac{-2 \pm \sqrt{-36}}{2(2)} = \frac{-2 \pm 6i}{4} = -\frac{1}{2} \pm \frac{3}{2}i \]

\(4\) で割るとき、実部と虚部の両方を割ってください。

検算。 解を元の式に入れ直します。\(\left(-\tfrac{1}{2}+\tfrac{3}{2}i\right)^{2} = \tfrac{1}{4} - \tfrac{3}{2}i - \tfrac{9}{4} = -2 - \tfrac{3}{2}i\) なので

\[ 2\left(-2-\tfrac{3}{2}i\right) + 2\left(-\tfrac{1}{2}+\tfrac{3}{2}i\right) + 5 = -4 - 3i - 1 + 3i + 5 = 0 \]

✓ もう一方の解でも、\(i\) の符号が全部逆になるだけで同じ \(0\) になります。

(c) \(\Delta < 0\) なので、実数の解がありません。グラフが \(x\) 軸を横切るのは実数の解のところだけですから、\(0\) 回です(第7節)。

giving a reason が付いているので、数だけでは点になりません。

試験ではこう書く

The graph does not cross the \(x\)-axis at all.

Since \(\Delta = -36 < 0\), the equation has no real solutions, and the \(x\)-intercepts of the graph are exactly the real solutions of \(2x^{2}+2x+5=0\).

(グラフは \(x\) 軸をまったく横切らない。\(\Delta = -36 < 0\) なので実数の解がなく、グラフの \(x\) 切片は \(2x^{2}+2x+5=0\) の実数解そのものだから、という意味です。)

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[\Delta = 2^{2} - 4(2)(5) = 4 - 40 = -36\]

(b) \[x = \frac{-2 \pm \sqrt{-36}}{4} = \frac{-2 \pm 6i}{4} = -\frac{1}{2} \pm \frac{3}{2}i\]

(c) The graph does not cross the \(x\)-axis. Since \(\Delta = -36 < 0\), there are no real solutions.

Why it works

ここでは、なぜ conjugate をかけると分母から \(i\) が消えるのかだけを説明します。

中学校で

\[ (x+y)(x-y) = x^{2} - y^{2} \]

を習いました。\(x = a\)、\(y = bi\) として、そのまま使います。

\[ (a+bi)(a-bi) = a^{2} - (bi)^{2} = a^{2} - b^{2}i^{2} \]

ここで \(i^{2} = -1\) なので、\(-b^{2}i^{2} = +b^{2}\) になります。

\[ (a+bi)(a-bi) = a^{2} + b^{2} \]

\(i\) が消えたのは、\(i\) の入った項が \(2\) つ出てきて、符号が逆で打ち消し合ったからです(\(+abi\) と \(-abi\))。そして残った \(a^{2}+b^{2}\) は、\(2\) つの実数の \(2\) 乗の和なので、必ず \(0\) 以上になります。分母として使えるのは、\(0\) にならない——つまり \(z \neq 0\) である——ときです。

Common errors

警告imaginary part を \(bi\) と答える

\(z = 3 + 2i\) の imaginary part を \(2i\) と書いてしまう誤りです。

正しくは \(2\) です。 real part も imaginary part も実数で、\(i\) は含みません(第2節)。

Find the imaginary part of z と Find the imaginary part of z, in the form bi は別の問いです。前者の答えに \(i\) を付けると、点になりません。

警告展開のあと、\(i^{2}\) をそのままにする

\((3+2i)(1-5i) = 3 - 13i - 10i^{2}\) で止めてしまう誤りです。

\(-10i^{2}\) は \(-10 \times (-1) = +10\) になります。負の数どうしのかけ算で符号が変わるところなので、ここで落としやすくなります(第4節)。

\(i^{2}\) が式に残っているうちは、まだ Cartesian form ではありません。

警告conjugate を分子だけ、あるいは分母だけにかける

\(\dfrac{3+2i}{1-5i}\) で、分母にだけ \(1+5i\) をかけると、値そのものが変わってしまいます。

かけているのは、\(\dfrac{1+5i}{1+5i} = 1\) という「\(1\)」です。分母と分子の両方にかけて、はじめて値が変わりません(第6節)。

警告\(\Delta < 0\) のとき「no solutions」と書く

\(\Delta < 0\) で答えられるのは no real solutions(実数の解がない)までです。

HL では、複素数の解が \(2\) つあります。 Solve と問われていたら、\(a \pm bi\) の形まで書いてください(第7節)。

no solutions と no real solutions の \(1\) 語の違いが、そのまま点数の差になります。

警告\(\sqrt{-36}\) を \(-6\) と書く

\(-6\) を \(2\) 乗すると \(+36\) なので、\(\sqrt{-36}\) にはなりません。

\[ \sqrt{-36} = \sqrt{36}\,i = 6i \]

負号は \(i\) として外に出し、\(\sqrt{\ }\) の中には正の数 \(36\) だけを残します。\(i\) を先に外に出す、という順番を固定しておくと安全です(第1節)。

Using your GDC (TI-Nspire CX II)

1. Complex mode setting(複素数を表示させる設定)

初期状態のままだと、複素数の答えが Error: Non-real result になることがあります。

doc → Settings → Document Settings

Real or Complex を Rectangular にしてください。

ヒントRectangular は \(a + bi\) の形のことです

Polar にすると \(r\,e^{i\theta}\) の形で返ってきます。これは AHL 1.13 で扱う exponential form です。

このページでは \(a + bi\) の形が欲しいので、Rectangular にしておきます。同じ設定は、あとで AHL 5.17b の複素数の eigenvalue(固有値)でも使います。

2. Entering \(i\)(\(i\) の入れ方)

虚数単位の \(i\) は、記号パレットから選びます。キーボードのいちばん下、左端の π のキーを押すとパレットが開きます。\(\pi\)、\(i\)、\(\infty\)、\(e\)、\(\theta\) が並んでいるので、そこから \(i\) を選んでください。

警告キーボードの i は、ふつうの変数です

アルファベットとして打った i は、値の入っていない変数として扱われます。CX II は値の入っていない変数を計算できないので、そこで止まってエラーの表示が出ます。

エラーが出たら、まず \(i\) をパレットのものに入れ直してください。

うまく入っているかどうかは、i^2 と打つのがいちばん速い確かめ方です。\(-1\) が返れば、虚数単位の \(i\) が入っています。

3. Arithmetic with complex numbers(四則をそのまま入れる)

かっこを付けて、そのまま打ちます。

(3+2i)(1-5i)

\(13 - 13i\) と返ります。

商は、分数のテンプレート(\(9\) キーの右にあるテンプレートのパレット)に、分子と分母を見た目のまま入れられます。

\[ \frac{3+2i}{1-5i} \]

enter で入力すると \(-\dfrac{7}{26} + \dfrac{17}{26}i\) と分数のまま、ctrl + enter で入力すると小数で返ります(AHL 1.14 の inverse matrix(逆行列)と同じ挙動です)。\(1\) 行で (3+2i)/(1-5i) と打っても、答えは同じです。

ヒント答えの形は、問題文の指定で決まります

in the form a + bi where a and b are rational なら分数、correct to 3 significant figures なら小数です。電卓の表示をそのまま写すのではなく、問われた形にそろえてください。

4. Powers and part functions(累乗と、部分を取り出す関数)

累乗も、見た目のまま入れられます。^ を押すと指数の位置に移るので、そこに \(8\) と打つだけです。

\[ (1+i)^{8} \]

\(16\) と返ります。次の \(3\) つも使えます。

表 2: 複素数から部分を取り出す関数
入力 返るもの 意味
conj(3+2i) \(3-2i\) conjugate
real(3+2i) \(3\) real part
imag(3+2i) \(2\) imaginary part

imag() が返すのは \(2\) であって \(2i\) ではありません。Common errors の \(1\) つ目と同じ約束です。

ヒント関数名を覚えていなくても、メニューから選べます

この \(3\) つは、Complex Number Tools にまとめて並んでいます。

menu → Number → Complex Number Tools

Complex Conjugate、Real Part、Imaginary Part を選ぶと、かっこ付きの形が入力欄に出るので、あとは中身を打つだけです。つづりを間違える心配がありません。

同じところにある Magnitude(\(\lvert z \rvert\))と Polar Angle(\(\arg z\))は、AHL 1.12b で使います。

5. Solving quadratic equations(\(2\) 次方程式を解く)

\(2\) 次方程式は、Polynomial Root Finder で解けます。

menu → Algebra → Polynomial Tools → Find Roots of Polynomial

次数を \(2\) にして係数を入れ、根の種類を Real and Complex にすると、複素数の解も返ります。返ってくるのは \(-0.5 + 1.5\,i\) と \(-0.5 - 1.5\,i\) のような小数です。分数の答えが要るときは、自分で \(-\dfrac{1}{2} \pm \dfrac{3}{2}i\) と書き直してください。

警告答案には、解の公式を書いてください

Solve と問われたとき、答えの数字だけでは満点になりません。\(\Delta\) の値と、解の公式に入れた式を書いてください。

電卓は、書いた答えが合っているかを確かめるために使います。

6. Checking answers(検算のしかた)

複素数の計算は、答えを元の式に入れ直すのが最も確実です。

  • 商 \(\dfrac{z_1}{z_2} = w\) を出したら、\(w \times z_2\) を計算して \(z_1\) に戻るか見る
  • \(2\) 次方程式 \(2x^{2}+2x+5 = 0\) の解 \(x_0\) を出したら、\(2x_0^{2} + 2x_0 + 5\) を計算して \(0\) になるか見る

手で計算した答えを電卓に打ち直すことになるので、写し間違いも一緒に見つかります。

Exercises

1 Let \(z_1 = 5 + 3i\) and \(z_2 = 2 - 4i\). Find \(z_1 + z_2\), \(z_1 - z_2\) and \(3z_1 + 2z_2\).

\[z_1 + z_2 = (5+2) + (3-4)i = 7 - i\]

\[z_1 - z_2 = (5-2) + (3+4)i = 3 + 7i\]

\[3z_1 + 2z_2 = (15 + 9i) + (4 - 8i) = 19 + i\]

real part どうし、imaginary part どうしで計算します(第3節)。

\(3\) つ目では、先に \(3z_1 = 15+9i\) と \(2z_2 = 4-8i\) をそれぞれ出してから足すと、符号の間違いが減ります。\(z_2\) の imaginary part が \(-4\) なので、\(2z_2\) の imaginary part は \(-8\) です。

2 Expand and simplify \((4-3i)(2+5i)\), giving your answer in the form \(a + bi\).

\[(4-3i)(2+5i) = 8 + 20i - 6i - 15i^{2} = 8 + 14i + 15 = 23 + 14i\]

\(-15i^{2}\) が \(+15\) になります(第4節)。\(i^{2}\) を残したまま答えにしないでください。

\(i\) の項は \(20i - 6i = 14i\) です。\(-3i \times 2 = -6i\) の符号に気をつけてください。

3 Write \(\dfrac{2+i}{3-i}\) in the form \(a + bi\), where \(a\) and \(b\) are rational numbers.

\[\frac{2+i}{3-i} = \frac{(2+i)(3+i)}{(3-i)(3+i)} = \frac{6+2i+3i+i^{2}}{9+1} = \frac{5+5i}{10} = \frac{1}{2} + \frac{1}{2}i\]

分母の conjugate は \(3+i\) です。分母は \(3^{2}+1^{2} = 10\) になります(式 4)。

分子は \(6 + 2i + 3i + i^{2} = 6 + 5i - 1 = 5 + 5i\) です。

最後に \(10\) で割るとき、実部と虚部の両方を割ってください。\(\dfrac{5}{10} = \dfrac{1}{2}\) です。

検算。 \(\left(\tfrac{1}{2}+\tfrac{1}{2}i\right)(3-i) = \tfrac{3}{2} - \tfrac{1}{2}i + \tfrac{3}{2}i + \tfrac{1}{2} = 2 + i\) ✓

4 Let \(z = 3 - 7i\). Write down \(z^{*}\), and find \(z + z^{*}\) and \(z z^{*}\).

\[z^{*} = 3 + 7i\]

\[z + z^{*} = 6\]

\[z z^{*} = 3^{2} + 7^{2} = 9 + 49 = 58\]

\(z + z^{*} = 2a\)、\(z z^{*} = a^{2}+b^{2}\) です(第5節)。

\(z z^{*}\) で \(b = -7\) を \(2\) 乗すると \(+49\) になります。符号は消えます。 \(z\) と \(z^{*}\) を実際に展開しても、同じ \(58\) が出ます。

5 Find the value of \(i^{50}\).

\[i^{50} = (i^{4})^{12} \times i^{2} = 1^{12} \times (-1) = -1\]

\(50 = 4 \times 12 + 2\) なので、\(4\) つの輪を \(12\) 周してから \(2\) つ進む、と考えます(第4節)。

つまり、\(50\) を \(4\) で割った余りの \(2\) だけを見ればよく、\(i^{2} = -1\) が答えです。

\(50\) 回かけ算をする必要はありません。

6 Solve the equation \(x^{2} - 6x + 25 = 0\), giving your answers in the form \(a + bi\).

\[\Delta = (-6)^{2} - 4(1)(25) = 36 - 100 = -64\]

\[x = \frac{6 \pm \sqrt{-64}}{2} = \frac{6 \pm 8i}{2} = 3 \pm 4i\]

\(\sqrt{-64} = 8i\) です。\(i\) を先に外に出してください(第1節)。

\(2\) で割るときは、実部と虚部の両方を割ります。\(\dfrac{6}{2} = 3\)、\(\dfrac{8}{2} = 4\) です。

検算。 \(x = 3+4i\) を元の式に入れ直します。\((3+4i)^{2} = 9 + 24i - 16 = -7+24i\) なので

\[ (-7+24i) - 6(3+4i) + 25 = -7 + 24i - 18 - 24i + 25 = 0 \]

✓ \(0\) になりました。

7 Solve the equation \(3x^{2} + 4x + 3 = 0\). Give your answers correct to \(3\) significant figures.

\[\Delta = 4^{2} - 4(3)(3) = 16 - 36 = -20\]

\[x = \frac{-4 \pm \sqrt{-20}}{6} = \frac{-4 \pm 2\sqrt{5}\,i}{6} = -\frac{2}{3} \pm \frac{\sqrt{5}}{3}i\]

\[x = -0.667 + 0.745i \quad \text{or} \quad x = -0.667 - 0.745i\]

\(\sqrt{-20} = \sqrt{20}\,i = 2\sqrt{5}\,i\) です。\(\sqrt{20}\) をそのまま残しても構いません。

\(6\) で割ると \(\dfrac{-4}{6} = -\dfrac{2}{3}\)、\(\dfrac{2\sqrt{5}}{6} = \dfrac{\sqrt{5}}{3}\) になります。

問題文が \(3\) s.f. を指定しているので、最後に小数にします。 \(\dfrac{\sqrt{5}}{3} = 0.7453\ldots\) なので \(0.745\) です。

途中で小数にすると、丸めの誤差が積み重なります。分数のまま計算して、最後だけ小数にしてください。

8 The equation \(x^{2} + kx + 10 = 0\), where \(k\) is a positive integer, has no real solutions.

(a) Find the largest possible value of \(k\).

(b) For this value of \(k\), state how many times the graph of \(y = x^{2}+kx+10\) meets the \(x\)-axis, giving a reason.

(a) \[\Delta = k^{2} - 40 < 0 \ \Rightarrow \ k^{2} < 40\] \[\sqrt{40} = 6.32\ldots \ \Rightarrow \ \text{the largest positive integer is } k = 6\]

(b) The graph does not meet the \(x\)-axis. With \(k = 6\), \(\Delta = 36 - 40 = -4 < 0\), so there are no real solutions and therefore no \(x\)-intercepts.

「実数の解を持たない」は、\(\Delta < 0\) と同じ意味です(第7節)。

\(k^{2} - 40 < 0\) から \(k^{2} < 40\) です。\(k\) は正の整数なので、\(k = 6\) のとき \(36 < 40\) で成り立ち、\(k = 7\) のとき \(49 > 40\) で成り立ちません。ですから最大は \(6\) です。

\(k^{2} < 40\) を \(k < 6.32\) とだけ書いて終わらないでください。 問われているのは整数の最大値です。

(b) は giving a reason が付いているので、回数だけでは点になりません。\(\Delta\) の値を計算して示してください。

試験ではこう書く

The graph does not meet the \(x\)-axis.

When \(k = 6\) the discriminant is \(\Delta = 6^{2}-4(1)(10) = -4\), which is negative, so the equation has no real solutions and the graph has no \(x\)-intercepts.

9 Show that \((2+i)^{2} = 3 + 4i\). Hence find \((2+i)^{4}\).

\[(2+i)^{2} = 4 + 4i + i^{2} = 4 + 4i - 1 = 3 + 4i\]

\[(2+i)^{4} = \left((2+i)^{2}\right)^{2} = (3+4i)^{2} = 9 + 24i + 16i^{2} = 9 + 24i - 16 = -7 + 24i\]

Hence は「前の結果を使いなさい」という指示です。\((2+i)\) を \(4\) 回かけるのではなく、\((2+i)^{2}\) のかたまりを \(2\) 乗します(例 1 と同じ考え方です)。

\((3+4i)^{2}\) でも \(16i^{2} = -16\) になります。\(9 - 16 = -7\) です。

検算。 GDC に \((2+i)^{4}\) と入れると \(-7 + 24i\) と返ります ✓

10 A student writes: “The equation \(x^{2} + 9 = 0\) has no solutions.” Explain why this statement is not correct, and state the solutions of the equation.

The statement is only true if we look for solutions among the real numbers. Since \(\Delta = 0^{2} - 4(1)(9) = -36 < 0\), the equation has no real solutions, but it does have two complex solutions.

\[x^{2} = -9 \ \Rightarrow \ x = \pm\sqrt{9}\,i = \pm 3i\]

The solutions are \(x = 3i\) and \(x = -3i\).

Explain why が付いているので、英語で理由を一文書く必要があります。

言うべきことは \(1\) つです。「解がない」のではなく「実数の解がない」のであって、複素数まで広げれば \(2\) つある、ということです(Common errors の \(4\) つ目)。

解そのものは、解の公式を使わなくても出せます。\(x^{2} = -9\) から \(x = \pm 3i\) です。\(3i\) と \(-3i\) は conjugate pair になっています(第7節)。

\(b = 0\) なので、この方程式では real part が \(\dfrac{-b}{2a} = 0\)、つまり \(2\) つの解はどちらも purely imaginary です。

試験ではこう書く

The equation has no solutions among the real numbers, because \(\Delta = -36 < 0\).

It is not correct to say it has no solutions at all: over the complex numbers there are two, \(x = 3i\) and \(x = -3i\).