AHL 5.9a — Derivatives of \(\sin x\), \(\cos x\), \(\tan x\), \(e^{x}\), \(\ln x\) and \(x^{n}\)(三角関数・指数関数・対数関数と有理数乗の導関数)

ノートWhat you should be able to do
  • \(\sin x\)、\(\cos x\)、\(\tan x\)、\(e^{x}\)、\(\ln x\) の derivative(導関数)を書ける。
  • \(x^{n}\) の公式 \(f(x) = ax^{n} \Rightarrow f'(x) = anx^{\,n-1}\) を、\(n\) が分数のときにも使える。
  • \(\sqrt{x}\) や \(\dfrac{4}{\sqrt{x}}\) を \(x^{n}\) の形に書き直してから微分できる。
  • 項がいくつあっても、項ごとに微分できる。
  • 三角関数の微分の公式が radian(弧度)のときだけ成り立つことを説明できる。
  • 電卓の Angle を Radian にしてから計算できる。

The idea

1. Beyond powers of \(x\)(SL で微分できたのは \(x^{n}\) の形だけ)

SL 5.3 で使った公式は、\(1\) 本だけでした。

\[ f(x) = a x^{n} \ \Rightarrow \ f'(x) = a\,n\,x^{\,n-1} \tag{1}\]

\(3x^{5}\) も \(\dfrac{6}{x^{2}} = 6x^{-2}\) も、これで微分できます。けれども \(\sin x\) や \(e^{x}\) は、\(x^{n}\) の形をしていません。 ですから、この公式では手が出ませんでした。

この 5.9a で増えるのは、次の \(2\) つです。

  1. \(n\) が分数のときも使えるようになる(\(\sqrt{x}\) が微分できる)
  2. \(x^{n}\) 以外の \(5\) つの derivative(導関数)が加わる(\(\sin\)、\(\cos\)、\(\tan\)、\(e^{x}\)、\(\ln x\))

5.9 の内容は、これで終わりではありません。\(2\) つの式を組み合わせた形の微分と、同時に変わる \(2\) つの量の扱いが AHL 5.9b にあります。このページは、その土台になります。

2. Rational exponents(\(n\) が分数でもよい)

HL では、\(x^{n}\) の \(n\) に rational number(有理数、つまり分数で書ける数)を入れてよいことになります。SL では整数だけでした。

公式そのものは変わりません。 変わったのは、\(n\) に入れてよい数の範囲だけです。

\[ f(x) = x^{\frac{1}{2}} \ \Rightarrow \ f'(x) = \frac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}} \]

\[ f(x) = x^{\frac{2}{3}} \ \Rightarrow \ f'(x) = \frac{2}{3}x^{-\frac{1}{3}} \]

やることは SL のときと同じ \(2\) つです。指数を前に下ろして掛け、指数から \(1\) を引く(SL 5.3)。

微分する前に、\(x^{n}\) の形に書き直します

試験の問題文は \(x^{\frac{1}{2}}\) とは書かず、\(\sqrt{x}\) と書いてきます。そのままでは公式に入りません。 先に書き直します。

表 1: 根号を \(x^{n}\) の形に直す
問題文の形 \(x^{n}\) の形 微分すると
\(\sqrt{x}\) \(x^{\frac{1}{2}}\) \(\dfrac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}}\)
\(\dfrac{1}{\sqrt{x}}\) \(x^{-\frac{1}{2}}\) \(-\dfrac{1}{2}x^{-\frac{3}{2}}\)
\(\dfrac{4}{\sqrt{x}}\) \(4x^{-\frac{1}{2}}\) \(-2x^{-\frac{3}{2}}\)
\(x\sqrt{x}\) \(x^{\frac{3}{2}}\) \(\dfrac{3}{2}x^{\frac{1}{2}}\)
\(\sqrt[3]{x^{2}}\) \(x^{\frac{2}{3}}\) \(\dfrac{2}{3}x^{-\frac{1}{3}}\)

この書き直しは SL 1.5 の指数法則です。 新しい規則ではありません。

例題 1 Let \(f(x) = \sqrt{x} + \dfrac{4}{\sqrt{x}}\), for \(x > 0\).

(a) Write \(f(x)\) in the form \(x^{p} + 4x^{q}\).

(b) Find \(f'(x)\).

(c) Show that \(f'(4) = 0\), and write down the coordinates of the stationary point of the graph of \(f\).

(a) 根号を \(x^{n}\) の形に直します(表 1)。

\[ \sqrt{x} = x^{\frac{1}{2}}, \qquad \frac{4}{\sqrt{x}} = 4x^{-\frac{1}{2}} \]

\[ f(x) = x^{\frac{1}{2}} + 4x^{-\frac{1}{2}} \]

(b) \(x^{n}\) の公式を、それぞれの項に使います(式 1)。\(n\) が分数でも、やることは同じです(第2節)。

\[ \frac{d}{dx}\left(x^{\frac{1}{2}}\right) = \frac{1}{2}x^{\frac{1}{2}-1} = \frac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}} \]

\[ \frac{d}{dx}\left(4x^{-\frac{1}{2}}\right) = 4 \times \left(-\frac{1}{2}\right)x^{-\frac{1}{2}-1} = -2x^{-\frac{3}{2}} \]

\[ f'(x) = \frac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}} - 2x^{-\frac{3}{2}} \]

(c) \(x = 4\) を入れます。\(4^{\frac{1}{2}} = 2\)、\(4^{\frac{3}{2}} = 8\) です。

\[ f'(4) = \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} - 2 \times \frac{1}{8} = \frac{1}{4} - \frac{1}{4} = 0 \]

\(y\) 座標も要ります(SL 5.6)。

\[ f(4) = \sqrt{4} + \frac{4}{\sqrt{4}} = 2 + 2 = 4 \]

stationary point(停留点)は \((4,\ 4)\) です。

検算。 \(f'(1) = \dfrac{1}{2} - 2 = -\dfrac{3}{2} < 0\)、\(f'(9) = \dfrac{1}{6} - \dfrac{2}{27} = \dfrac{5}{54} > 0\) です。\(x = 4\) の前で減り、後ろで増えているので、\((4,\ 4)\) は minimum です ✓

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[ f(x) = x^{\frac{1}{2}} + 4x^{-\frac{1}{2}} \]

(b) \[ f'(x) = \frac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}} - 2x^{-\frac{3}{2}} \]

(c) \[ f'(4) = \frac{1}{2}\left(\frac{1}{2}\right) - 2\left(\frac{1}{8}\right) = \frac{1}{4} - \frac{1}{4} = 0 \] \[ f(4) = 2 + 2 = 4 \] \[ \text{stationary point}: \ (4,\ 4) \]

3. Five new derivatives(新しい \(5\) つの導関数)

\(5\) つの derivative(導関数)を、表にまとめます。

表 2: 新しい \(5\) つ
\(f(x)\) \(f'(x)\) 気をつけるところ
\(\sin x\) \(\cos x\) 符号は付きません
\(\cos x\) \(-\sin x\) マイナスが付きます
\(\tan x\) \(\dfrac{1}{\cos^{2} x}\) \(2\) 乗するのは \(\cos x\) 全体です。\(\cos x = 0\) になる \(x\) では考えません
\(e^{x}\) \(e^{x}\) 変わりません
\(\ln x\) \(\dfrac{1}{x}\) \(x > 0\) でだけ考えます

この \(5\) つは、公式集の \(5.9\) の欄にそのまま印刷されています。 試験中に配られるので、覚える必要はありません。覚えるべきなのは、どれを使う場面なのかと、電卓を radian にしておくこと(第4節)の \(2\) つです。

ヒント\(\sin \to \cos \to -\sin \to -\cos \to \sin\)

\(\sin x\) を微分すると \(\cos x\)、\(\cos x\) を微分すると \(-\sin x\) です。もう \(2\) 回微分すると \(\sin x\) に戻ります。

\[ \sin x \ \to \ \cos x \ \to \ -\sin x \ \to \ -\cos x \ \to \ \sin x \]

マイナスが出るのは \(\cos\) を微分したときです。この向きだけ覚えておけば、符号で迷いません。

\(\cos^{2} x\) では、\(2\) 乗は \(\cos x\) 全体に付きます

公式集は \(\dfrac{1}{\cos^{2} x}\) と書いています。\(\cos^{2}x\) は \((\cos x)^{2}\)、つまり \(\cos x\) を計算してから \(2\) 乗するという意味です。

\[ \frac{1}{\cos^{2} x} = \frac{1}{(\cos x)^{2}} \]

教科書によっては、これを \(\sec^{2}x\) と書きます。AI の公式集は \(\dfrac{1}{\cos^{2}x}\) の形で印刷しています。 答案では公式集と同じ形で書いておけば確実です。

例題 2 The curve \(y = \tan x\) passes through the point where \(x = \dfrac{\pi}{4}\).

(a) Find the gradient of the curve at this point.

(b) Find the equation of the tangent to the curve at this point, giving your answer in the form \(y = mx + c\).

(a) \(\tan x\) の導関数は \(\dfrac{1}{\cos^{2}x}\) です(表 2)。\(2\) 乗するのは \(\cos x\) 全体です(第3節)。

\[ \frac{dy}{dx} = \frac{1}{\cos^{2}x} \]

\[ \cos\frac{\pi}{4} = \frac{1}{\sqrt{2}} \quad \Longrightarrow \quad \cos^{2}\frac{\pi}{4} = \frac{1}{2} \]

\[ \frac{dy}{dx} = \frac{1}{\frac{1}{2}} = 2 \]

(b) tangent(接線)には、傾きのほかに通る点が要ります(SL 5.4)。

\[ y = \tan\frac{\pi}{4} = 1 \quad \Longrightarrow \quad \text{点は} \ \left(\frac{\pi}{4},\ 1\right) \]

\[ y - 1 = 2\left(x - \frac{\pi}{4}\right) \]

\[ y = 2x - \frac{\pi}{2} + 1 = 2x - 0.571 \]

検算。 \(x = \dfrac{\pi}{4} = 0.7854\) を代入すると \(2(0.7854) - 0.571 = 1.00\) ✓ 接点を通っています。

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[ \frac{dy}{dx} = \frac{1}{\cos^{2}x} \] \[ \frac{dy}{dx}\bigg|_{x = \frac{\pi}{4}} = \frac{1}{\left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^{2}} = 2 \]

(b) \[ y = \tan\frac{\pi}{4} = 1 \] \[ y - 1 = 2\left(x - \frac{\pi}{4}\right) \] \[ y = 2x - 0.571 \]

4. Radian measure(\(\sin\)、\(\cos\)、\(\tan\) の公式は弧度法のときだけ)

\(\dfrac{d}{dx}\sin x = \cos x\)(表 2)は、\(x\) を radian で測っているときにだけ成り立ちます。

degree(度数法)で測ると \(\dfrac{\pi}{180}\) という余分な数が付いてしまいます(Why it works)。

HL の試験では、radian が既定です

HL の試験では、問題に特に書いていなければ、角度は radian で測ると考えます。

SL のときとは逆になります。 SL では degree が中心でしたが(SL 3.4)、HL では \(^{\circ}\) が書いていなければ radian です。

ですから、電卓の設定はこうします。

doc → Settings → Document Settings → Angle: Radian
警告\(^{\circ}\) が付いた問題は、記号を自分で入れます

\(\sin 40^{\circ}\) のように \(^{\circ}\) が書いてある問題も出ます。そのときも、設定は Radian のままで構いません。 度の記号を自分で入れれば、正しく計算されます(GDC 第1節)。

設定を行き来すると、戻し忘れが起きます。設定を変え忘れたまま計算すると、まったく違う値が出ます。しかもエラーにはならないので、気づきにくい失点です。

5. Differentiating term by term(項ごとに微分する)

式がいくつかの項の和でできているときは、項ごとに微分して、そのまま並べます。 SL のときと同じです。

\[ f(x) = 3\sin x - 2e^{x} + \ln x \]

\[ f'(x) = 3\cos x - 2e^{x} + \frac{1}{x} \]

係数はそのまま残ります。 \(3\sin x\) の微分は \(\cos x\) ではなく \(3\cos x\) です。

\(x = 1\) を入れてみます。

\[ f'(1) = 3\cos 1 - 2e^{1} + 1 = 1.62 - 5.44 + 1 = -2.82 \]

この \(\cos 1\) は radian です。 電卓が degree のままだと \(3\cos 1^{\circ} = 3.00\) になり、答えが \(-1.44\) とずれます。

例題 3 Let \(f(x) = 3\sin x - 2e^{x} + \ln x\), for \(x > 0\).

(a) Find \(f'(x)\).

(b) Find \(f'(1)\), giving your answer to three significant figures.

(a) 項ごとに微分します(第5節)。使うのは 表 2 の \(3\) つです。

  • \(3\sin x\) → \(3\cos x\)(係数 \(3\) はそのまま)
  • \(-2e^{x}\) → \(-2e^{x}\)(\(e^{x}\) は変わらない)
  • \(\ln x\) → \(\dfrac{1}{x}\)

\[ f'(x) = 3\cos x - 2e^{x} + \frac{1}{x} \]

(b) \(x = 1\) を入れます。電卓を Radian にしてから計算してください(GDC 第1節)。

\[ f'(1) = 3\cos 1 - 2e + 1 \]

\[ = 1.6209 - 5.4366 + 1 = -2.8157 \approx -2.82 \]

検算。 電卓の numerical derivative(数値微分)に \(f(x)\) そのものを入れて \(x = 1\) で微分すると \(-2.82\) です ✓(GDC 第2節)

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[ f'(x) = 3\cos x - 2e^{x} + \frac{1}{x} \]

(b) \[ f'(1) = 3\cos 1 - 2e + 1 = -2.82 \]

例題 4 The depth of water in a harbour, in metres, is modelled by

\[ h(t) = 4 + 2\sin t, \qquad 0 \leq t \leq 12 \]

where \(t\) is the time in hours after midnight.

(a) Find \(\dfrac{dh}{dt}\).

(b) Find the value of \(\dfrac{dh}{dt}\) when \(t = 1\).

(c) Interpret your answer to part (b) in the context of the model.

(a) 定数 \(4\) の微分は \(0\)、\(2\sin t\) の微分は \(2\cos t\) です(表 2)。

\[ \frac{dh}{dt} = 2\cos t \]

(b) \(t\) に \(^{\circ}\) が付いていないので、radian です(第4節)。

\[ \frac{dh}{dt}\bigg|_{t=1} = 2\cos 1 = 1.0806 \approx 1.08 \]

(c) 数値だけでは点になりません。単位を付けて、増えているのか減っているのかを言ってください(SL 5.1)。

試験ではこう書く

One hour after midnight the depth of the water is increasing at a rate of \(1.08\) metres per hour.

(真夜中の \(1\) 時間後、水深は毎時 \(1.08\) メートルの割合で増えている、という意味です。)

検算。 \(t = 1\) radian のとき \(\cos 1 > 0\) なので \(\dfrac{dh}{dt} > 0\)、つまり増えています。\(h(1) = 5.68\)、\(h(1.1) = 5.78\) と、実際に増えています ✓

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[ \frac{dh}{dt} = 2\cos t \]

(b) \[ \frac{dh}{dt} = 2\cos 1 = 1.08 \]

(c) One hour after midnight the depth is increasing at a rate of \(1.08\) metres per hour.

6. Where the derivatives are used(この \(5\) つを使う場面)

この \(5\) つの導関数は、SL で学んだ極大・極小(SL 5.6)や最適化(SL 5.7)に、そのまま使えます。SL でやったことが、そのまま使える関数の種類だけ広がるということです。

表 3: SL の内容が、そのまま広がります
SL で学んだこと ここで何が変わるか
接線の傾き(SL 5.4) \(y = \tan x\) の接線も出せる
増加・減少(SL 5.2) \(f'(x)\) の符号を、\(\sin\) や \(\ln\) の式でも調べられる
極大・極小(SL 5.6) \(e^{x} - 4x\) のような式でも \(f'(x) = 0\) を解ける
最適化(SL 5.7) 面積や体積の式に \(\sqrt{x}\) が入っていても扱える

このページでは、新しい解き方は出てきません。 微分できる関数が増えるだけです。\(\sqrt{x^{2}+9}\) のように、根号の中身が \(x\) そのものでない形は AHL 5.9b で扱います。

Why it works

なぜ radian でないと成り立たないのか

derivative(導関数)は「\(x\) が少し増えたとき、\(y\) がどれだけ増えるか」の割合です(SL 5.1)。ですから、\(x\) を何で測るかを変えると、値が変わります。

\(x = 0\) のあたりで考えます。radian なら、\(x\) が小さいとき

\[ \sin x \approx x \]

です。\(x = 0.1\) なら \(\sin 0.1 = 0.0998\)、\(x = 0.01\) なら \(\sin 0.01 = 0.0099998\)。ほとんど同じ数になります。だから gradient(傾き)は \(1\) です。

degree で同じことをすると

\[ \sin(0.1^{\circ}) = 0.00174\ldots \]

で、\(x\) の \(\dfrac{1}{57.3}\) ほどしかありません。傾きは \(\dfrac{\pi}{180} = 0.0175\) になります。

この違いは、\(\sin\) という関数のせいではなく、横軸の目盛りの取り方のせいです。degree は \(1\) 周を \(360\) に切るので、radian の \(2\pi \approx 6.28\) に比べて目盛りが細かく、グラフが横に引き伸ばされます。引き伸ばせば、傾きはそのぶん緩くなります。

\(\sin x \approx x\) が成り立つ測り方、つまり radian のときにだけ、\(\dfrac{d}{dx}\sin x = \cos x\) という余分な数の付かない形になります。radian は、微分がいちばんきれいになるように選ばれた測り方だと思ってください。

なぜ \(e^{x}\) だけが自分自身なのか

\(y = 2^{x}\) でも \(y = 3^{x}\) でも、微分するともとの形に比例した式になります。

\[ \frac{d}{dx}\left(a^{x}\right) = k \times a^{x} \]

この \(k\) は \(a\) によって決まる数で、\(a = 2\) なら \(k = 0.693\)、\(a = 3\) なら \(k = 1.099\) です。

\(a\) を \(2\) から \(3\) へ動かすと、\(k\) は \(0.693\) から \(1.099\) へ動きます。 途中のどこかで \(k = 1\) になるはずです。その \(a\) の値が \(e = 2.718\ldots\) です。

\(k = 1\) ということは

\[ \frac{d}{dx}\left(e^{x}\right) = 1 \times e^{x} = e^{x} \]

つまり、微分しても変わらないということです。\(y = e^{x}\) のグラフでは、\(x = 1\) における高さと傾きがどちらも \(e\) になります。

\(e\) は「たまたまきれいな数」ではなく、微分が自分自身になるように選んだ数です。

Common errors

警告\(\cos x\) を微分して、マイナスを落とす

誤り:\(\dfrac{d}{dx}(\cos x) = \sin x\) と書く。

正しくは:\(-\sin x\) です(表 2)。\(\sin \to \cos\) は符号なし、\(\cos \to -\sin\) は符号ありです(第3節)。

公式集に印刷されているので、書く前に見てください。

警告\(e^{x}\) に、\(x^{n}\) の公式を当てはめる

誤り:\(\dfrac{d}{dx}\left(e^{x}\right) = xe^{x-1}\) と書く。

\(x^{n}\) は \(x\) が下、\(e^{x}\) は \(x\) が上です。別の形なので、別の公式です。

正しくは:\(e^{x}\) のままです(表 2)。

警告\(\dfrac{1}{\cos^{2}x}\) の \(2\) 乗を、\(x\) に付ける

誤り:\(\dfrac{d}{dx}(\tan x)\) を \(\dfrac{1}{\cos x^{2}}\) や \(\dfrac{1}{\cos 2x}\) と書く。

\(\cos^{2}x\) は \((\cos x)^{2}\) です。\(\cos\) を計算してから \(2\) 乗します(第3節)。

正しくは:\(x = \dfrac{\pi}{4}\) なら \(\cos\dfrac{\pi}{4} = 0.7071\)、\(0.7071^{2} = 0.5\)、答えは \(2\) です。

警告電卓が Degree のまま計算する

誤り:\(3\cos 1 - 2e + 1\) を degree の設定で計算して、\(-1.44\) と答える。

degree だと \(\cos 1^{\circ} = 0.9998\) になり、radian の \(\cos 1 = 0.5403\) とはまったく違う値です。

正しくは:doc → Settings → Document Settings → Angle: Radian にしてから計算します。答えは \(-2.82\) です(GDC 第1節)。

エラーは出ません。 見た目は正常なまま、値だけがずれます。

警告\(\sqrt{x}\) や \(\dfrac{4}{\sqrt{x}}\) を、書き直さずに微分しようとする

誤り:\(\sqrt{x}\) を見て手が止まる、あるいは \(\dfrac{1}{2\sqrt{x}}\) を当てずっぽうで書く。

この公式は、\(x^{n}\) の形になっていないと使えません。

正しくは:\(x^{\frac{1}{2}}\)、\(4x^{-\frac{1}{2}}\) に直してから微分します(表 1)。

警告係数を落とす

誤り:\(3\sin x\) を微分して \(\cos x\) と書く。\(5e^{x}\) を微分して \(e^{x}\) と書く。

正しくは:\(3\cos x\)、\(5e^{x}\) です。係数はそのまま前に残ります(第5節)。

これは SL 5.3 でいちばん多かった失点と同じものです。関数が変わっても、同じところで落とします。

警告指数から \(1\) を引くところを間違える

誤り:\(x^{\frac{1}{2}}\) を微分して \(\dfrac{1}{2}x^{\frac{1}{2}}\) と書く(指数を減らし忘れる)。あるいは \(-\dfrac{1}{2}\) を \(\dfrac{1}{2}\) と書く。

正しくは:\(\dfrac{1}{2} - 1 = -\dfrac{1}{2}\) なので \(\dfrac{1}{2}x^{-\frac{1}{2}}\) です(第2節)。

分数の引き算だけ、紙の端で書いてから入れてください。

Using your GDC (TI-Nspire CX II)

AI HL は、\(3\) つの paper すべてで電卓が使えます。この項目では、設定がいちばん大事です。

1. Radian mode(Angle を Radian にする)

doc → Settings → Document Settings → Angle: Radian

HL の試験では、\(^{\circ}\) が書いていなければ radian です(第4節)。試験が始まったら、まずここを変えてください。

重要合っているかを \(1\) 回で確かめる方法

計算画面で \(\sin 1\) を計算してください。

表 4: 設定の確かめ方
出た値 設定
\(0.841\ldots\) Radian(正しい)
\(0.0175\ldots\) Degree(直してください)

\(1\) 秒で確かめられます。計算を始める前に、毎回これをやってください。

ヒント\(^{\circ}\) が付いた問題では、設定を変えなくても解けます

Degree に戻さなくても、\(40^{\circ}\) のように度の記号を自分で入れれば、radian 設定のまま正しく計算できます。度の記号は、記号パレットから選べます。

設定を行き来するより、こちらのほうが間違えにくいです。設定を変えた場合は、変えたことを忘れないでください。

2. Derivative at a point(\(1\) 点での微分係数を確かめる)

\(f'(x)\) の式は自分で書きます。電卓が返すのは、ある \(1\) 点での値だけです(SL 5.3)。

menu → Calculus → Derivative at a Point

微分のテンプレートが出るので、画面に出てくる形のまま入れます。

\[ \left. \frac{d}{dx}\left(3\sin x - 2e^{x} + \ln x\right) \right|_{x=1} \]

返るのは \(-2.82\) です。自分で作った \(f'(x) = 3\cos x - 2e^{x} + \dfrac{1}{x}\) に \(x = 1\) を入れても \(-2.82\) ✓

\(1\) 点で合えば、式はまず合っています。 符号の落とし忘れは、たいていこれで見つかります。

警告\(e\) は e^x のキーで入れます

キーボードの e の文字を打つと、ただの変数になってしまいます(AHL 1.9)。

3. Checking with graphs(グラフで確かめる)

\(f\) と、自分で作った \(f'\) を、同じ画面に描きます。

  • \(f1(x) = 3\sin(x) - 2e^{x} + \ln(x)\)
  • \(f2(x) = 3\cos(x) - 2e^{x} + \dfrac{1}{x}\)

\(f_1\) が水平なところで、\(f_2\) が \(x\) 軸を横切っていれば合っています。(SL 5.6)

たとえば \(f_1 = \sin x\)、\(f_2 = \cos x\) なら、\(\sin x\) が水平になる \(x = \dfrac{\pi}{2}\) で、\(\cos x\) が \(x\) 軸を横切っています。

この確かめ方が使えるのは、\(f\) が水平になるところがある式のときです。\(e^{x}\) や \(\ln x\) のように、ずっと増え続ける式では使えません。そのときは GDC 第2節 の \(1\) 点での確かめを使ってください。

4. Checking your answers(確かめ方)

\(4\) つあります。

  1. Angle が Radian か(表 4)
  2. \(\cos\) を微分したところに、マイナスが付いているか
  3. 係数が残っているか(\(3\sin x \to 3\cos x\))
  4. numerical derivative の値と、自分の \(f'(x)\) に代入した値が合うか

Exercises

1 Differentiate \(y = 4\sin x - 3\cos x\) with respect to \(x\).

\[ \frac{dy}{dx} = 4\cos x + 3\sin x \]

項ごとに微分します(第5節)。

  • \(4\sin x\) → \(4\cos x\)
  • \(-3\cos x\) → \(-3 \times (-\sin x) = +3\sin x\)

\(2\) つ目でマイナスが \(2\) 回出ます。 \(\cos\) の微分のマイナスと、もとの式のマイナスです。\((-3) \times (-1) = +3\) なので、答えは \(+3\sin x\) になります(表 2)。

符号を落とすと \(-3\sin x\) になり、間違いです。

2 Let \(f(x) = 2e^{x} + 5\ln x\), for \(x > 0\). Find \(f'(1)\), giving your answer to three significant figures.

\[ f'(x) = 2e^{x} + \frac{5}{x} \] \[ f'(1) = 2e + 5 = 10.4 \]

\(e^{x}\) の微分は \(e^{x}\)、\(\ln x\) の微分は \(\dfrac{1}{x}\) です(表 2)。

\(5\ln x\) の微分は \(\dfrac{5}{x}\) です。係数 \(5\) は、分子に残ります。 \(\dfrac{1}{5x}\) ではありません。

\[ f'(1) = 2(2.71828) + 5 = 5.4366 + 5 = 10.4366 \]

検算。 numerical derivative に \(f(x)\) を入れて \(x = 1\) で微分すると \(10.4\) ✓(GDC 第2節)

3 Let \(y = x^{\frac{3}{2}}\), for \(x \geq 0\). Find \(\dfrac{dy}{dx}\), and hence find the gradient of the curve when \(x = 4\).

\[ \frac{dy}{dx} = \frac{3}{2}x^{\frac{1}{2}} \] \[ \frac{dy}{dx}\bigg|_{x=4} = \frac{3}{2}\sqrt{4} = \frac{3}{2}(2) = 3 \]

指数を前に下ろして、\(1\) を引きます(第2節)。

\[ \frac{3}{2} - 1 = \frac{1}{2} \]

ここが分数の引き算です。 \(\dfrac{3}{2} - 1 = \dfrac{3}{2} - \dfrac{2}{2} = \dfrac{1}{2}\) と、\(1\) を \(\dfrac{2}{2}\) に直してから引くと確実です。

\(x^{\frac{1}{2}} = \sqrt{x}\) なので、\(x = 4\) では \(2\) です。

4 Let \(f(x) = \dfrac{8}{\sqrt{x}}\), for \(x > 0\). Find \(f'(4)\).

\[ f(x) = 8x^{-\frac{1}{2}} \] \[ f'(x) = 8\left(-\frac{1}{2}\right)x^{-\frac{3}{2}} = -4x^{-\frac{3}{2}} \] \[ f'(4) = -\frac{4}{4^{\frac{3}{2}}} = -\frac{4}{8} = -0.5 \]

まず \(x^{n}\) の形に書き直します(表 1)。\(\dfrac{8}{\sqrt{x}} = 8x^{-\frac{1}{2}}\) です。

指数の引き算は \(-\dfrac{1}{2} - 1 = -\dfrac{3}{2}\)。負の数から \(1\) を引くので、絶対値は大きくなります。

\(4^{\frac{3}{2}} = \left(\sqrt{4}\right)^{3} = 2^{3} = 8\) です。

検算。 \(f(x) = \dfrac{8}{\sqrt{x}}\) は \(x\) が増えると減る式なので、\(f'(4)\) は負のはずです ✓

5 Find the gradient of the curve \(y = \tan x\) at the point where \(x = \dfrac{\pi}{3}\).

\[ \frac{dy}{dx} = \frac{1}{\cos^{2}x} \] \[ \cos\frac{\pi}{3} = \frac{1}{2} \quad \Longrightarrow \quad \cos^{2}\frac{\pi}{3} = \frac{1}{4} \] \[ \frac{dy}{dx} = \frac{1}{\frac{1}{4}} = 4 \]

\(\dfrac{\pi}{3}\) は \(60^{\circ}\) です。\(\cos 60^{\circ} = \dfrac{1}{2}\) ですから、\(2\) 乗して \(\dfrac{1}{4}\)、逆数をとって \(4\) です。

\(2\) 乗するのは \(\cos x\) 全体です(第3節)。\(\cos\left(\dfrac{\pi}{3}\right)^{2}\) と読み違えると、まったく違う値になります。

検算。 電卓を Radian にして、numerical derivative に \(\tan(x)\) を入れ、\(x = \pi/3\) で微分すると \(4\) です ✓

6 Let \(f(x) = \dfrac{6}{x^{2}} + 3\sqrt{x}\), for \(x > 0\). Find \(f'(4)\).

\[ f(x) = 6x^{-2} + 3x^{\frac{1}{2}} \] \[ f'(x) = -12x^{-3} + \frac{3}{2}x^{-\frac{1}{2}} \] \[ f'(4) = -\frac{12}{64} + \frac{3}{2}\left(\frac{1}{2}\right) = -\frac{3}{16} + \frac{3}{4} = \frac{9}{16} = 0.5625 \]

\(2\) つの項を、それぞれ \(x^{n}\) の形に直します(表 1)。

  • \(\dfrac{6}{x^{2}} = 6x^{-2}\) … これは SL の範囲でもできた形です
  • \(3\sqrt{x} = 3x^{\frac{1}{2}}\) … 分数の指数なので、この項目で初めて微分できます

\(x = 4\) では \(4^{-3} = \dfrac{1}{64}\)、\(4^{-\frac{1}{2}} = \dfrac{1}{2}\) です。

\[ -12 \times \frac{1}{64} = -\frac{3}{16} = -0.1875, \qquad \frac{3}{2} \times \frac{1}{2} = 0.75 \]

検算。 \(-0.1875 + 0.75 = 0.5625\) ✓ numerical derivative でも \(0.5625\) です。

7 Let \(f(x) = x - \ln x\), for \(x > 0\).

(a) Find the \(x\)-coordinate of the stationary point of the graph of \(f\).

(b) State, with a reason, whether this point is a maximum or a minimum.

(a) \[ f'(x) = 1 - \frac{1}{x} \] \[ 1 - \frac{1}{x} = 0 \quad \Longrightarrow \quad x = 1 \]

(b) Minimum. For \(0 < x < 1\), \(f'(x) < 0\) (for example \(f'(0.5) = -1\)), and for \(x > 1\), \(f'(x) > 0\) (for example \(f'(2) = 0.5\)). The gradient changes from negative to positive, so the point is a minimum.

(a) \(x\) の微分は \(1\)、\(\ln x\) の微分は \(\dfrac{1}{x}\) です(表 2)。

\[ 1 = \frac{1}{x} \quad \Longrightarrow \quad x = 1 \]

(b) State, with a reason なので、答えと理由の両方が要ります。\(f'\) の符号を、\(x = 1\) の左右で調べます(SL 5.6)。

\[ f'(0.5) = 1 - 2 = -1 < 0, \qquad f'(2) = 1 - 0.5 = 0.5 > 0 \]

負から正へ変わるので minimum です。

試験ではこう書く

Since \(f'(0.5) = -1 < 0\) and \(f'(2) = 0.5 > 0\), the gradient changes from negative to positive at \(x = 1\), so the stationary point is a minimum.

8 Let \(f(x) = e^{x} - 4x\). Find the coordinates of the stationary point of the graph of \(f\), giving each coordinate to three significant figures.

\[ f'(x) = e^{x} - 4 \] \[ e^{x} - 4 = 0 \quad \Longrightarrow \quad x = \ln 4 = 1.386 \] \[ f(\ln 4) = 4 - 4\ln 4 = -1.545 \] \[ (1.39,\ -1.55) \]

\(e^{x}\) の微分は \(e^{x}\)、\(-4x\) の微分は \(-4\) です。

\(e^{x} = 4\) を解くと \(x = \ln 4\) です(SL 1.5)。\(\ln 4 = 1.3863\)。

\(y\) 座標も必要です。\(e^{\ln 4} = 4\) なので

\[ f(\ln 4) = 4 - 4(1.3863) = 4 - 5.5452 = -1.5452 \]

丸める前の \(x = \ln 4\) を電卓に入れたまま、\(y\) を計算してください。 丸めた \(1.39\) を代入し直すと \(-1.5452\) になり、値がわずかにずれます。この問題では \(3\) 桁に丸めればどちらも \(-1.55\) ですが、桁数を多く求められる問題では答えが変わります。

検算。 グラフを描いて menu → Analyze Graph → Minimum を使うと \((1.39,\ -1.55)\) が出ます ✓(SL 5.6)

9 A student differentiates \(y = \cos x\) and writes \(\dfrac{dy}{dx} = \sin x\). Identify the error and write down the correct derivative.

The student has left out the negative sign. The formula booklet gives \[ f(x) = \cos x \ \Rightarrow \ f'(x) = -\sin x \] so the correct derivative is \(\dfrac{dy}{dx} = -\sin x\).

\(\cos x\) を微分するとマイナスが付きます(表 2)。\(\sin x\) を微分するときは付きません。片方だけに付くので、取り違えやすいところです。

グラフでも確かめられます。\(x\) が \(0\) から少し増えると \(\cos x\) は減ります。ですから \(x = 0\) の近くで導関数は負でなければなりません。\(\sin x\) は \(x > 0\) の近くで正なので、符号が合いません。

この公式は公式集に印刷されています。 書く前に見れば防げる誤りです。

試験ではこう書く

The student has left out the negative sign.

The formula booklet gives \(f(x) = \cos x \Rightarrow f'(x) = -\sin x\), so the correct derivative is \(-\sin x\).

10 Let \(f(x) = \ln x + \sin x\), for \(x > 0\).

(a) Find \(f'(x)\).

(b) Use your GDC to find \(f'(2)\), and check your answer by substituting into your expression from part (a).

(a) \[ f'(x) = \frac{1}{x} + \cos x \]

(b) \[ f'(2) = \frac{1}{2} + \cos 2 = 0.5 - 0.4161 = 0.0839 \]

(a) \(\ln x\) → \(\dfrac{1}{x}\)、\(\sin x\) → \(\cos x\) です。

(b) 電卓を Radian にしてから使ってください(GDC 第1節)。

\[ \left. \frac{d}{dx}\left(\ln x + \sin x\right) \right|_{x=2} \]

返るのは \(0.0839\) です。

\(\cos 2\) は負です。\(2\) radian は \(115^{\circ}\) ほどで、\(90^{\circ}\) を過ぎているからです。\(\cos 2 = -0.4161\)。

\[ 0.5 + (-0.4161) = 0.0839 \]

検算。 \(2\) つの方法で \(0.0839\) が一致しました ✓ 電卓が Degree のままだと \(\cos 2^{\circ} = 0.9994\) になり、答えが \(1.50\) とまったく違う値になります。