SL 1.6 — Simple deductive proof(簡単な演繹的証明と、\(=\) と \(\equiv\))

ノートWhat you should be able to do
  • Show that の問題で、答えではなく道すじが問われていることが分かる。
  • LHS から RHS へという決まった書き方で、証明を並べられる。
  • \(=\)(equality)と \(\equiv\)(identity)を使い分けられる。
  • 数の等式(numerical)を、文字の等式(algebraic)に一般化できる。
  • 偶数・奇数・連続する整数を、\(2n\)、\(2n+1\)、\(n\)、\(n+1\) で表せる。
  • 自分の結果を確かめる方法を、答案に書ける。

The idea

1. Show that questions(答えではなく、道すじを示す問題)

ふつうの問題では、答えが分かっていません。求めた答えそのものが、採点の対象になります。

Show that の問題では、答えは問題文にもう書いてあります。 ですから、答えを書き写しただけでは、求められていることをしたことになりません。

採点されるのは、「なぜそうなるか」の道すじです。

ただし、示したいところまで書き切る必要はあります。等式なら \(= \text{RHS}\) まで、「\(3\) の倍数である」なら \(3 \times (\text{整数})\) の形にして、かっこの中が整数だと述べるところまでです。

ですから、Show that を見たら、次の \(2\) つを考えてください。

  1. どちらから出発するか
  2. どんな順で式を変えていくか

2. LHS to RHS proofs(左辺から右辺へ)

等式を示すときの、答案の書き方を見ます。図は、試験で求められる、左辺から右辺へ変形していく書き方です。

図 1: 試験で求められる書き方です。左辺から始めて、下へ右辺まで変形します。

出発点は \(2\) つのどちらかです。LHS(左辺)から出発して RHS(右辺)へ進むか、その逆向きに進みます。 どちらでもかまいませんが、途中で向きを変えてはいけません。 このページでは、LHS → RHS の向きで書きます(図 1)。

\((x+2)^{2} - 4x \equiv x^{2} + 4\) を示す場合なら、

\[ \text{LHS} = (x+2)^{2} - 4x \]

\[ = x^{2} + 4x + 4 - 4x \]

\[ = x^{2} + 4 = \text{RHS} \]

左辺だけをさわっています。 右辺には、最後まで手を触れません。

警告両辺を同時に変形する方法には注意する

\((x+2)^{2} - 4x = x^{2} + 4\) の両辺に同じ操作をして、\(0 = 0\) にたどり着く書き方があります。

この書き方が、それだけで誤りというわけではありません。 使った変形がすべて同値変形(逆向きにも成り立つ変形)なら、論理としては通ります。

問題は、一つひとつの変形が逆向きにも成り立つかを、自分で確かめなければならないことです。\(2\) 乗のように、もとの式へ必ず戻れるとはかぎらない操作を \(1\) つでも使うと、示したい向きの論理が言えなくなります(Why it works)。

IB の答案では、LHS だけを既知の代数の方法で変形して RHS にたどり着く書き方が、いちばん安全です。 逆向きを確かめる手間がまったく要らず、道すじが採点者にそのまま伝わります。

どうしても両方を整理したいときは、左辺と右辺を別々に、独立に整理して、同じ式になったことを示してください。 これなら、どちらも「示したいこと」を使っていません。

IB の試験で求められている証明の書き方も、LHS → RHS(または逆向き)です。まずはそちらで書けるようにしてください。

3. Equations and identities(方程式と恒等式)

方程式と恒等式のちがいを、記号の面から整理します。

図 2: 方程式と恒等式を、並べて比べます。

同じ「イコール」でも、意味が \(2\) 通りあります(図 2)。

表 1: \(=\) と \(\equiv\) のちがい
記号 使われ方 意味 例
\(=\) equation(方程式)として この式が成り立つ値を問う。特定の値でだけ成り立つことが多い \(2x + 1 = 7\)(\(x = 3\) のときだけ)
\(\equiv\) identity(恒等式)として 式が定義されるかぎり、すべての値で成り立つという主張 \((x+1)^{2} \equiv x^{2} + 2x + 1\)

\(\equiv\) が使える場面で \(=\) を書くことはできます。逆はできません。 \(2x + 1 \equiv 7\) は誤りです。

\(2x + 1 = 7\) は、\(x = 3\) を入れたときだけ正しい式です。\(x = 0\) を入れると \(1 = 7\) となり、成り立ちません。

\((x+1)^{2} \equiv x^{2} + 2x + 1\) は、どんな \(x\) でも正しい式です。\(x = 0\) でも \(x = 100\) でも \(x = -7\) でも成り立ちます。

ノート\(\dfrac{1}{n}\) は、\(n = 0\) では値がありません

ですから \(\dfrac{1}{n} - \dfrac{1}{n+1} \equiv \dfrac{1}{n(n+1)}\) のような式には、\((n \neq 0, \ n \neq -1)\) と書き添えます。分母を \(0\) にする値だけを、外しておくという約束です。

ヒント\(\equiv\) を書かなくても、減点されないことが多い

試験では、\(\equiv\) の代わりに \(=\) を書いても、通ることがほとんどです。

ただし、問題文が \(\equiv\) を使っていたら、答案でも \(\equiv\) を使ってください。 問題文の記号に合わせるのが、いちばん安全です。

例題 1 (a) Show that \((x-4)^{2} + 3 \equiv x^{2} - 8x + 19\).

(b) Explain why the symbol \(\equiv\) is used in part (a) rather than \(=\).

(a) 左辺を展開します。

\[ \text{LHS} = (x-4)^{2} + 3 \]

\[ = x^{2} - 8x + 16 + 3 \]

\[ = x^{2} - 8x + 19 = \text{RHS} \]

(b) Explain why なので、英語で理由を書きます。

試験ではこう書く

The symbol \(\equiv\) means that the two expressions are equal for every value of \(x\), not just for some values.

The working in part (a) only expands the brackets and collects terms, and every step is a rearrangement that is valid whatever \(x\) is, so the two sides agree for all \(x\).

An ordinary equals sign such as in \(2x + 1 = 7\) states a condition that is true only for particular values of \(x\), which is a different claim.

(記号 \(\equiv\) は、\(2\) つの式が一部の値ではなくすべての \(x\) で等しいことを表す。(a) の計算はかっこを展開して項をまとめただけで、\(x\) の値を仮定していないので、両辺はすべての \(x\) で一致する。\(2x + 1 = 7\) のようなふつうの等号は、特定の \(x\) でだけ成り立つ条件を述べており、主張の種類がちがう、という意味です。)

検算((a) について)。 \(x = 1\) を、両辺に入れます。

\[ \text{LHS} = (1-4)^{2} + 3 = 9 + 3 = 12, \qquad \text{RHS} = 1 - 8 + 19 = 12 \]

合いました ✓ 念のため \(x = 5\) でも見ます。\(\text{LHS} = 1 + 3 = 4\)、\(\text{RHS} = 25 - 40 + 19 = 4\) ✓ さらに \(x = 2\) でも見ます。\(\text{LHS} = 4 + 3 = 7\)、\(\text{RHS} = 4 - 16 + 19 = 7\) ✓

\(2\) 次式どうしなら、\(3\) つの値で合うところまで見てください。 \(2\) つでは足りません。\(x^{2}\) の係数までまちがえていると、\(2\) つの値で偶然そろうことがあります。

\((x-4)^{2}\) を \(x^{2} - 16\) としていたら、\(x^{2} - 13\) になります。\(x = 1\) で \(-12\) となり、\(12\) と符号まで違います。

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[\text{LHS} = (x-4)^{2} + 3 = x^{2} - 8x + 16 + 3 = x^{2} - 8x + 19 = \text{RHS}\]

(b) \(\equiv\) means the two sides are equal for every value of \(x\). The working only expands and collects, so no value of \(x\) is assumed. An equation such as \(2x + 1 = 7\) holds only for particular values.

4. Algebraic generalisation(数の例から、文字の証明へ)

数の等式を \(1\) つ見つけたら、それを文字で一般化して証明するところまでが、この項目の内容です。これを algebraic generalisation(文字による一般化)と言います。

\(\dfrac{1}{5} - \dfrac{1}{6} = \dfrac{1}{30}\) という数の等式を見てください。\(30 = 5 \times 6\) です。

\(5\) を \(n\) に、\(6\) を \(n+1\) に置きかえると、次の形が見えてきます。

\[ \frac{1}{n} - \frac{1}{n+1} \equiv \frac{1}{n(n+1)} \qquad (n \neq 0, \ n \neq -1) \tag{1}\]

これを示すのが、algebraic generalisation の問題です。LHS から出発して、RHS にたどり着くまで書きます。

\[ \text{LHS} = \frac{1}{n} - \frac{1}{n+1} \]

\[ = \frac{n+1}{n(n+1)} - \frac{n}{n(n+1)} \]

\[ = \frac{(n+1) - n}{n(n+1)} \]

\[ = \frac{1}{n(n+1)} = \text{RHS} \]

数の例は、文字の証明の下書きです。 何を \(n\) に置きかえればよいかが、数の例に書いてあります。

例題 2 (a) Show that \(\dfrac{1}{m+1} + \dfrac{1}{m^{2}+m} \equiv \dfrac{1}{m}\), where \(m \neq 0\) and \(m \neq -1\).

(b) Explain why the conditions \(m \neq 0\) and \(m \neq -1\) are needed.

(a) \(m^{2} + m = m(m+1)\) と因数分解するのが、最初の一歩です。 これで、共通分母が \(m(m+1)\) だと見えます。第 \(2\) 項の分母は、もうその形です。

\[ \text{LHS} = \frac{1}{m+1} + \frac{1}{m(m+1)} \]

\[ = \frac{m}{m(m+1)} + \frac{1}{m(m+1)} \]

\[ = \frac{m+1}{m(m+1)} \]

\[ = \frac{1}{m} = \text{RHS} \]

最後に \(m+1\) が約分で消えるのがポイントです。

(b) 分母が \(0\) になる値を外すためです。\(m = 0\) なら \(\dfrac{1}{m}\) と \(\dfrac{1}{m^{2}+m}\) が書けず、\(m = -1\) なら \(\dfrac{1}{m+1}\) と \(\dfrac{1}{m^{2}+m}\) が書けません。\(\equiv\) は「両辺が定義されるすべての値で等しい」という意味なので、定義されない値は最初から外しておきます(第 3 節)。

検算。 使っていない値で見ます。

\(m = 5\) なら、\(\text{LHS} = \dfrac{1}{6} + \dfrac{1}{30} = \dfrac{5}{30} + \dfrac{1}{30} = \dfrac{6}{30} = \dfrac{1}{5}\)、\(\text{RHS} = \dfrac{1}{5}\) ✓

\(m = 2\) なら、\(\text{LHS} = \dfrac{1}{3} + \dfrac{1}{6} = \dfrac{2}{6} + \dfrac{1}{6} = \dfrac{1}{2}\)、\(\text{RHS} = \dfrac{1}{2}\) ✓

\(m^{2}+m\) を \(m(m+1)\) にせず、\(m^{2}\) と \(m\) に分けていたら、共通分母が見つからずに止まります。因数分解が、この問題のすべてです。

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[m^{2} + m = m(m+1)\]

\[\text{LHS} = \frac{1}{m+1} + \frac{1}{m(m+1)} = \frac{m}{m(m+1)} + \frac{1}{m(m+1)}\]

\[= \frac{m+1}{m(m+1)} = \frac{1}{m} = \text{RHS}\]

(b) If \(m = 0\) or \(m = -1\), a denominator is zero and the expressions are not defined, so these values must be excluded.

5. Integers in algebraic form(整数を、文字で表す)

「偶数」「奇数」「連続する \(3\) つの整数」は、そのままでは計算できません。文字で書きかえます。

表 2: 整数を文字で表す
日本語 英語(問題文の言い方) 文字で
偶数 an even number \(2n\)
奇数 an odd number \(2n + 1\)
連続する \(2\) つの整数 two consecutive integers \(n\), \(n+1\)
連続する \(3\) つの整数 three consecutive integers \(n\), \(n+1\), \(n+2\)
連続する \(2\) つの奇数 two consecutive odd numbers \(2n+1\), \(2n+3\)
\(3\) の倍数 a multiple of \(3\) \(3n\)

\(n\) は整数です。答案では where \(n\) is an integer と、一言添えてください。

\(n\) は負の整数でも \(0\) でもかまいません。 \(2n+1\) は、\(n = -1\) で \(-1\)、\(n = 0\) で \(1\) となり、すべての奇数を表せます。問題文が any(任意の)と言っていたら、書いた式が全部の場合を表しているかを確かめてください。the sum of any three consecutive integers なら、\(n\) にどの整数を入れてもよい形になっている必要があります。

Show that ... is a multiple of 3(\(3\) の倍数であることを示す)なら、最後に \(3 \times (\text{整数})\) の形にします。

\[ n + (n+1) + (n+2) = 3n + 3 = 3(n+1) \]

\(n+1\) は整数なので、\(3(n+1)\) は \(3\) の倍数です。答案には、英語でこう書きます。

Since \(n+1\) is an integer, \(3(n+1)\) is a multiple of \(3\).

くくり出して、かっこの中が整数だと述べたところで、証明は終わりです。 どちらか一方では足りません。

例題 3 (a) Show that the sum of any three consecutive integers is a multiple of \(3\).

(b) A student claims that the sum of any two consecutive integers is even. Comment on this claim.

(a) 連続する \(3\) つの整数を \(n\)、\(n+1\)、\(n+2\) とおきます(表 2)。

\[ n + (n+1) + (n+2) = 3n + 3 = 3(n+1) \]

\(n\) は整数なので \(n+1\) も整数です。ですから \(3(n+1)\) は \(3\) の倍数です。

(b) Comment on なので、英語で書きます。正しいか正しくないかを、はっきり述べてから理由を書きます。

試験ではこう書く

The claim is false.

Two consecutive integers can be written as \(n\) and \(n+1\), where \(n\) is an integer, and their sum is \(n + (n+1) = 2n + 1\).

Since \(2n\) is even, \(2n + 1\) is odd for every integer \(n\), so the sum is odd in every case.

One counterexample is also sufficient: \(3 + 4 = 7\), which is odd.

(この主張は正しくない。連続する \(2\) つの整数は \(n\)、\(n+1\)(\(n\) は整数)と書け、その和は \(2n+1\) である。\(2n\) は偶数なので \(2n+1\) はどんな整数 \(n\) でも奇数であり、和はつねに奇数で、偶数になることはない。反例をひとつ挙げるだけでも決まる。\(3 + 4 = 7\) は奇数である、という意味です。)

検算((a) について)。 実際の数で試します。\(4 + 5 + 6 = 15 = 3 \times 5\) ✓ \(10 + 11 + 12 = 33 = 3 \times 11\) ✓

式のほうとも合わせます。 \(n = 4\) なら \(3(n+1) = 3 \times 5 = 15\) ✓ 文字の答えと数の答えが、同じところを指しています。

答えを \(3n\) で止めていたら、\(+3\) を落としています。\(n = 4\) で \(12\) となり、\(15\) と合いません。

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) Let the integers be \(n\), \(n+1\) and \(n+2\), where \(n\) is an integer. \[n + (n+1) + (n+2) = 3n + 3 = 3(n+1)\] Since \(n+1\) is an integer, the sum is a multiple of \(3\).

(b) False. Two consecutive integers are \(n\) and \(n+1\), and \(n + (n+1) = 2n + 1\), which is odd for every integer \(n\). For example, \(3 + 4 = 7\).

6. Checking results(自分の結果を確かめる)

AA SL では、証明や計算のあとで、自分の結果を確かめることまで求められます。答案に、確かめ方を書けるようにします。

いちばん手軽なのは、両辺に同じ数を入れて、値が合うかを見ることです。

式 1 なら、\(n = 5\) を入れます。

\[ \text{LHS} = \frac{1}{5} - \frac{1}{6} = \frac{1}{30}, \qquad \text{RHS} = \frac{1}{5 \times 6} = \frac{1}{30} \]

合いました ✓

警告\(1\) つの値で合っても、証明にはなりません

\(x = 0\) を入れると、\((x+2)^{2}\) も \(x^{2} + 4\) も \(4\) になります。それでも \((x+2)^{2} \equiv x^{2} + 4\) は正しくありません。 \(x = 1\) で \(9\) と \(5\) に分かれます。

片方向にだけ強い道具だと思ってください。

  • 合わなかった → 正しくないと分かる(強い)
  • 合った → まだ正しいかもしれない(弱い)

ですから検算は、自分の計算ミスを見つけるために使い、証明の本体は 第 2 節 の式変形で書きます。

identity(恒等式)かどうかを見るだけなら、\(2\) つの式を \(\mathsf{f1}(x)\)、\(\mathsf{f2}(x)\) としてグラフを描き、重なるかどうかを見る手もあります。表(ctrl + T)で、いくつかの \(x\) の値を並べても分かります。

ただし、画面で重なって見えても、ちがう式のことがあります。 ずれが小さいと、点の中に隠れます。表で \(x\) の値をいくつも見るほうが確実です。

これは確かめであって、証明ではありません。 Paper 1 でも Paper 2 でも、答案に書くのは式変形です。

例題 4 (a) Show that \(\dfrac{1}{n} + \dfrac{1}{n+1} \equiv \dfrac{2n+1}{n(n+1)}\), where \(n \neq 0\) and \(n \neq -1\).

(b) Verify your result by substituting \(n = 3\).

(a) 共通分母は \(n(n+1)\) です。左辺だけをさわります。

\[ \text{LHS} = \frac{1}{n} + \frac{1}{n+1} \]

\[ = \frac{n+1}{n(n+1)} + \frac{n}{n(n+1)} \]

\[ = \frac{(n+1) + n}{n(n+1)} \]

\[ = \frac{2n+1}{n(n+1)} = \text{RHS} \]

分子を先に足してしまわないでください。 \(\dfrac{1}{n} + \dfrac{1}{n+1}\) は \(\dfrac{2}{2n+1}\) ではありません。

(b) \(n = 3\) を、両辺にそれぞれ入れます。

\[ \text{LHS} = \frac{1}{3} + \frac{1}{4} = \frac{4}{12} + \frac{3}{12} = \frac{7}{12} \]

\[ \text{RHS} = \frac{2(3)+1}{3 \times 4} = \frac{7}{12} \]

合いました ✓

検算((a) について)。 使っていない値でも見ます。\(n = -2\) なら \(\text{LHS} = -\dfrac{1}{2} + (-1) = -\dfrac{3}{2}\)、\(\text{RHS} = \dfrac{2(-2)+1}{(-2)(-1)} = \dfrac{-3}{2}\) ✓ 負の整数でも成り立ちます。

検算((b) について)。 \(n = 3\) で合ったことは、計算ミスがないという確認です(第 6 節)。\(1\) つの値で合っても証明にはならないので、答案の本体は (a) の式変形のままです。

ノート解答例(答案用紙にはこう書く)

(a) \[\text{LHS} = \frac{1}{n} + \frac{1}{n+1} = \frac{n+1}{n(n+1)} + \frac{n}{n(n+1)}\]

\[= \frac{(n+1)+n}{n(n+1)} = \frac{2n+1}{n(n+1)} = \text{RHS}\]

(b) \[n = 3: \quad \text{LHS} = \frac{1}{3} + \frac{1}{4} = \frac{7}{12}, \qquad \text{RHS} = \frac{7}{3 \times 4} = \frac{7}{12}\]

Why it works

なぜ、示したい式から出発する書き方に注意が要るのでしょうか。

逆向きに戻せない操作を使うと、必要な向きの論理が言えなくなるからです。

\(-1 = 1\) を「証明」してみます。

\[ -1 = 1 \]

両辺を \(2\) 乗すると、

\[ 1 = 1 \]

正しい式にたどり着きました。しかし \(-1 = 1\) は正しくありません。

どこがおかしいのでしょうか。 使った \(2\) 乗が、同値変形になっていないところです。

示せたのは「\(A\) が正しいなら \(B\) も正しい」だけです。必要なのは「\(B\) が正しいから \(A\) も正しい」のほうですが、\(1 = 1\) から \(-1 = 1\) へは戻れません。\(2\) 乗は符号のちがいを消してしまうからです。

両辺を同時に変形する書き方そのものが誤り、というわけではありません。 両辺に \(3\) を足す、両辺から \(x^{2}\) を引く、といった操作は逆向きにも成り立つので、論理としては通ります。危ないのは、\(2\) 乗のように戻せない操作がまざったときです。しかも、まざっているかどうかは \(1\) 行ずつ確かめないと分かりません。

逆向きにも成り立つ変形だけを使ったのなら、\(\iff\)(同値)で書けます。 方程式を 解く \(1\) 行ずつが、その例です。

\[ 2x + 6 = 10 \iff 2x = 4 \iff x = 2 \]

「両辺から \(6\) を引く」も「両辺を \(2\) で割る」も、\(6\) を足す・\(2\) を掛けるで元に戻せます。 戻せるから、\(\iff\) でつなげます。

\(2\) 乗はちがいます。\(x = -1 \implies x^{2} = 1\) は正しいのですが、 \(x^{2} = 1 \implies x = -1\) は正しくありません(\(x = 1\) もあります)。ですから \(\implies\) までで、\(\iff\) にはできません。\(\iff\) と書いてよいかどうかが、 そのまま「両辺を変形してよいかどうか」です。

LHS から RHS へ進む書き方なら、その確認そのものが要りません。 出発点の \((x+2)^{2} - 4x\) は、示したい式ではなく、ただの式です。それを等しい式に置きかえていって、行き先が RHS だった、という順序になります。だから IB の答案では、こちらを勧めます。

\(=\) と \(\equiv\) のちがいも、ここから説明できます。 方程式は「この式が成り立つのはどの \(x\) か」という問いです。恒等式は「どの \(x\) でも成り立つ」という事実です。証明で作るのは、いつも後者のほうです。

Common errors

警告示したい式から出発して、両辺を変形する

\((x+2)^{2} - 4x \equiv x^{2} + 4\) を、この式のまま書いて、両辺を変形して \(0 = 0\) にする書き方です。

この書き方が通るのは、使った変形がすべて逆向きにも成り立つときだけです(第 2 節)。\(2\) 乗のように戻せない操作がまざると、示したい向きの論理になりません。

答案では、LHS か RHS のどちらか一方から出発してください。 \(\text{LHS} =\) から始める習慣を付けると、逆向きの確認そのものが要らなくなります。

警告\(1\) つの値を入れて「証明した」とする

\(x = 0\) で合っても、それは \(1\) つの場合にすぎません(第 6 節)。

恒等式の証明には、文字のままの式変形が要ります。

ただし、\(1\) つの値で合わなかったときは、正しくないと言い切れます。反例(counterexample)は、\(1\) つで足ります。

警告「\(n\) は整数」を書き忘れる

\(3(n+1)\) が \(3\) の倍数だと言えるのは、\(n+1\) が整数だからです(第 5 節)。

\(n = 0.5\) なら \(3 \times 1.5 = 4.5\) で、倍数ではありません。

答案に where \(n\) is an integer と、一言だけ書いてください。

警告偶数と奇数を、同じ文字で書く

\(2n\) と \(2n+1\) は、同じ \(n\) を使うと連続した \(2\) 数になります。

「任意の偶数と、任意の奇数」を表したいなら、\(2m\) と \(2n+1\) のように別の文字を使ってください。

問題文が「連続する」と言っているかどうかを、必ず読み直してください。

警告分数を小数に直して示す

\(\dfrac{1}{3} + \dfrac{1}{6} = 0.5\) と書いても、必要な過程を示したことになりません。

\(\dfrac{1}{3}\) は割り切れないので、小数にした時点で近い値になっています。

分数の計算は、分数のまま。

Exercises

1 Show that \((n+1)^{2} - n^{2} \equiv 2n + 1\), and hence explain why the difference between the squares of two consecutive integers is always odd.

\[\text{LHS} = (n+1)^{2} - n^{2} = n^{2} + 2n + 1 - n^{2} = 2n + 1 = \text{RHS}\]

\(n\) is an integer, so \(2n+1\) is odd. Hence the difference between the squares of two consecutive integers is always odd.

\((n+1)^{2}\) を展開すると \(n^{2} + 2n + 1\) です。\(n^{2}\) が引き算で消えて、\(2n+1\) が残ります。

\(2n+1\) は、第 5 節の表のとおり奇数の形です。ここまで書いて、はじめて「いつも奇数」と言えます。\(2n+1\) を出しただけでは、まだ理由になっていません。

検算。 連続する \(2\) つの整数を \(1\) 組えらんで確かめます。\(7\) と \(8\) なら \(64 - 49 = 15\) で、奇数です ✓ \(n = 7\) を式に入れても \(2(7)+1 = 15\) ✓ 負のほうでも見ます。 \(-3\) と \(-2\) なら \(4 - 9 = -5\) で、\(2(-3)+1 = -5\) ✓

2 Show that the sum of any four consecutive integers is even.

\[n + (n+1) + (n+2) + (n+3) = 4n + 6 = 2(2n + 3)\]

\(2n+3\) is an integer, so \(2(2n+3)\) is even.

連続する \(4\) つの整数は \(n\)、\(n+1\)、\(n+2\)、\(n+3\) です(第 5 節)。足すと \(4n + 6\) になります。

偶数を示すので、\(2 \times (\text{整数})\) の形にします。 \(4n + 6 = 2(2n+3)\) とくくり、\(2n+3\) が整数だと述べたところで終わりです。

\(4n+6\) のままでは足りません。 \(4\) でくくって \(4\left(n + \dfrac{3}{2}\right)\) としてしまうと、かっこの中が整数でなくなります。

検算。 \(5, 6, 7, 8\) なら和は \(26\) で、偶数です ✓ \(n = 5\) を式に入れても \(4(5)+6 = 26\) ✓ \(4\) の倍数ではないことにも気づいてください。\(26 \div 4\) は割り切れません。

3 Show that \((x+5)^{2} - 10x \equiv x^{2} + 25\).

\[\text{LHS} = (x+5)^{2} - 10x = x^{2} + 10x + 25 - 10x = x^{2} + 25 = \text{RHS}\]

\((x+5)^{2} = x^{2} + 10x + 25\) です。まん中の項は \(2 \times 5 = 10\) 倍の \(x\) です。

そこから \(10x\) を引くので、\(x\) の項がちょうど消えます。

検算。 \(x = 2\) を両辺に入れます。\(\text{LHS} = 7^{2} - 20 = 49 - 20 = 29\)、\(\text{RHS} = 4 + 25 = 29\) ✓

\((x+5)^{2}\) を \(x^{2} + 25\) としていたら、\(x^{2} + 25 - 10x\) となり、\(x = 2\) で \(9\) です。\(29\) と合いません。

4 Show that \((2x-1)^{2} + 4x \equiv 4x^{2} + 1\).

\[\text{LHS} = (2x-1)^{2} + 4x = 4x^{2} - 4x + 1 + 4x = 4x^{2} + 1 = \text{RHS}\]

\((2x-1)^{2}\) では、はじめの項も \(2\) 乗されます。 \((2x)^{2} = 4x^{2}\) です(SL 1.5 第 4 節)。

まん中の項は \(2 \times 2x \times (-1) = -4x\) です。ここに \(+4x\) が来て、消えます。

検算。 \(x = 3\) を両辺に入れます。\(\text{LHS} = 5^{2} + 12 = 25 + 12 = 37\)、\(\text{RHS} = 36 + 1 = 37\) ✓

\((2x-1)^{2}\) を \(2x^{2} - 1\) としていたら、\(x = 3\) で \(18 - 1 + 12 = 29\) となり、\(37\) と合いません。

5 Show that \(\dfrac{1}{n} - \dfrac{1}{n+2} \equiv \dfrac{2}{n(n+2)}\), where \(n \neq 0\) and \(n \neq -2\).

\[\text{LHS} = \frac{1}{n} - \frac{1}{n+2} = \frac{n+2}{n(n+2)} - \frac{n}{n(n+2)}\]

\[= \frac{(n+2) - n}{n(n+2)} = \frac{2}{n(n+2)} = \text{RHS}\]

式 1 と同じ形ですが、分子に残るのが \(2\) です。\((n+2) - n = 2\) だからです。

検算。 \(n = 4\) を両辺に入れます。

\[ \text{LHS} = \frac{1}{4} - \frac{1}{6} = \frac{3}{12} - \frac{2}{12} = \frac{1}{12}, \qquad \text{RHS} = \frac{2}{4 \times 6} = \frac{2}{24} = \frac{1}{12} \]

合いました ✓ 右辺は約分すると \(\dfrac{1}{12}\) です。 約分の前で止めて「合わない」と思わないでください。

分子を \(1\) としていたら、\(\dfrac{1}{24}\) となり、\(\dfrac{1}{12}\) と合いません。

6 Show that the sum of any two consecutive odd numbers is a multiple of \(4\).

Let the two consecutive odd numbers be \(2n+1\) and \(2n+3\), where \(n\) is an integer.

\[(2n+1) + (2n+3) = 4n + 4 = 4(n+1)\]

Since \(n+1\) is an integer, the sum is a multiple of \(4\).

連続する \(2\) つの奇数は、\(2\) だけ離れています。 ですから \(2n+1\) と \(2n+3\) です(表 2)。

\(2n+1\) と \(2n-1\) でも、同じ結論になります。どちらでもかまいません。

最後に \(4\) でくくるのがポイントです。\(4n+4\) で止めると、\(4\) の倍数だと言い切れていません。

検算。 実際の数で試します。\(5 + 7 = 12 = 4 \times 3\) ✓ \(11 + 13 = 24 = 4 \times 6\) ✓

式とも合わせます。 \(5 = 2n+1\) なら \(n = 2\) で、\(4(n+1) = 12\) ✓

\(n\) には整数をどれでも入れられるので、\(2n+1\) はすべての奇数を表しています。だから「任意の \(2\) つ」に答えられます。

「\(n\) は整数」を書き忘れないでください。

7 Show that \((x+3)^{2} - (x+1)^{2} \equiv 4(x+2)\).

\[\text{LHS} = (x+3)^{2} - (x+1)^{2} = (x^{2} + 6x + 9) - (x^{2} + 2x + 1)\]

\[= 4x + 8 = 4(x+2) = \text{RHS}\]

引き算のかっこが関門です。\(-(x^{2} + 2x + 1)\) は、\(3\) つの項すべての符号が変わります。

\(x^{2}\) が消え、\(6x - 2x = 4x\)、\(9 - 1 = 8\) が残ります。

ここの \(x\) は、整数とはかぎりません。 恒等式なので、どんな数でも成り立ちます。where \(n\) is an integer のような断りは要りません。

検算。 \(x = 1\) を両辺に入れます。\(\text{LHS} = 16 - 4 = 12\)、\(\text{RHS} = 4 \times 3 = 12\) ✓ \(x = 5\) でも見ます。\(\text{LHS} = 64 - 36 = 28\)、\(\text{RHS} = 4 \times 7 = 28\) ✓ \(x = 0\) でも見ます。\(\text{LHS} = 9 - 1 = 8\)、\(\text{RHS} = 4 \times 2 = 8\) ✓

\(-1\) の符号を落として \(4x + 10\) としていたら、\(x = 1\) で \(14\) となり、\(12\) と合いません。

8 State whether \(=\) or \(\equiv\) is the correct symbol in each statement.

(a) \(5x + 10 \ \square \ 5(x+2)\)

(b) \(x^{2} - 1 \ \square \ 0\)

(c) \((x-1)(x+1) \ \square \ x^{2} - 1\)

(a) \(\equiv\) (true for all \(x\))

(b) \(=\) (true only for \(x = 1\) and \(x = -1\))

(c) \(\equiv\) (true for all \(x\))

見分け方は \(1\) つです。すべての \(x\) で成り立つか、特定の \(x\) でだけか(表 1)。

(a) 右辺を展開すると \(5x + 10\) です。同じ式なので \(\equiv\) です。

(b) \(x^{2} - 1 = 0\) は方程式で、\(x = 1\) と \(x = -1\) でだけ成り立ちます。

(c) 左辺を展開すると \(x^{2} - 1\) です。同じ式なので \(\equiv\) です。

検算。 \(x = 0\) を入れてみます。

(a) \(10\) と \(10\) で一致 ✓ (b) \(-1\) と \(0\) で不一致 → すべての \(x\) ではない ✓ (c) \(-1\) と \(-1\) で一致 ✓

(a) と (c) は、\(x = 0\) で合っただけでは \(\equiv\) の証拠になりません(第 6 節)。展開して同じ式になることを見てください。(b) は逆で、\(1\) つ合わない値があれば \(\equiv\) でないと言い切れます。

9 Explain why substituting one value of \(x\) is not enough to prove an identity.

An identity claims that the two sides are equal for every value of \(x\), while a substitution tests only one value. Two different expressions can still agree there: \((x+3)^{2}\) and \(x^{2} + 9\) are both \(9\) at \(x = 0\), but \(16\) and \(10\) at \(x = 1\).

(この短い形が、答案に必要な最低限です。 下の「試験ではこう書く」は、余裕があるときの書き方です。)

Explain why なので、理由を述べ、例を \(1\) つ添えます。

要点は、主張の大きさと、確かめた範囲が釣り合っていないことです。恒等式は無限個の \(x\) についての主張ですが、代入は \(1\) 個しか見ていません。

検算。 例が本当に成り立つかを確かめます。\(x = 0\) のとき \((0+3)^{2} = 9\)、\(0 + 9 = 9\) で一致 ✓ \(x = 1\) のとき \((1+3)^{2} = 16\)、\(1 + 9 = 10\) で不一致 ✓ 「\(1\) 点で合うのに恒等式ではない」例が、実際に作れました。

逆向きは強いことも、書き添えると印象がよくなります。\(1\) つでも合わない値が見つかれば、恒等式ではないと言い切れます。

試験ではこう書く

An identity is the claim that two expressions are equal for every value of the variable, so it makes infinitely many statements at once.

Substituting a single value tests only one of them, and two different expressions can easily agree at one point.

For instance, \((x+3)^{2}\) and \(x^{2}+9\) are both equal to \(9\) when \(x = 0\), yet at \(x = 1\) they take the values \(16\) and \(10\), so the identity \((x+3)^{2} \equiv x^{2}+9\) is false.

A proof therefore has to transform one side into the other algebraically, without assuming any particular value.

The reverse direction is different: a single value at which the two sides disagree is enough to show that an identity is false.

10 A student is asked to show that \((x+3)^{2} - 6x \equiv x^{2} + 9\), and writes

\[ (x+3)^{2} - 6x = x^{2} + 9 \]

\[ x^{2} + 9 = x^{2} + 9 \]

and concludes that the identity is proved. Identify the error in the student’s method, and write a correct proof.

The student starts from the statement that is to be proved and rearranges both sides. This is valid only if every step can be reversed, and the student does not check that. The layout expected in an examination begins from one side alone.

\[\text{LHS} = (x+3)^{2} - 6x = x^{2} + 6x + 9 - 6x = x^{2} + 9 = \text{RHS}\]

Identify the error なので、どこが違うのかを名指ししてから、正しい書き方を示します。

答え自体も、式変形も合っています。 足りないのは、その変形が逆向きにも成り立つという確認です(第 2 節)。

検算。 正しい証明が本当に正しいかを見ます。\(x = 2\) を両辺に入れます。\(\text{LHS} = 25 - 12 = 13\)、\(\text{RHS} = 4 + 9 = 13\) ✓

生徒の式変形そのものは、まちがっていません。 展開も項の整理も、逆向きに戻せる操作だからです。ですから、この答案は論理として破れているわけではありません。

まずいのは、それが読み手に分からないことです。逆向きに戻せるかどうかを、生徒は \(1\) 行も確かめていません。\(2\) 乗のような戻せない操作がまざっていれば、同じ書き方で \(-1 = 1\) から \(1 = 1\) にたどり着けてしまいます(Why it works)。

答案では、LHS か RHS のどちらか一方から出発してください。 確かめることが \(1\) つも増えません。

試験ではこう書く

The student’s first line is the statement that is to be proved, so the result is written down as if it were already known.

Reducing it to \(x^{2} + 9 = x^{2} + 9\) shows only that the claim implies something true.

That is enough only if every step can be reversed, and the student does not check this.

The same layout can lead to a false conclusion as soon as a step cannot be reversed: starting from \(-1 = 1\) and squaring both sides also gives \(1 = 1\).

The layout expected in an examination begins from one side alone: \(\text{LHS} = (x+3)^{2} - 6x = x^{2} + 6x + 9 - 6x = x^{2} + 9 = \text{RHS}\).

Substituting \(x = 2\) gives \(13\) on both sides, which checks the working.